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どうする?21世紀の格差と貧困〜年越し派遣村から見た日本社会〜

橘木さんの講演会で紹介があった、「派遣村」の湯浅誠さんの講演会へ行って来た。

18時前に会場へ行って受付を済ませてホールへ入ろうとしたとき、UHBが「政権交代」についてインタビューを求めて来たけど断った。マスゴミの演出した「政権交代」が終わった直後に何をしようとしているのやら。どうせしばらくしたら、今度は民主党政権たたきが始まるだろう。

札幌市教育研究集会というイベントだったようで、18:30までは主催者と来賓のあいさつがあった。民主党が選挙で一人勝ちして連合の人が浮かれているように感じた。本当の勝負はこれからだ。

てっきり湯浅誠さんの講演会だとばかり思っていたけれど、中島岳志さんとの対談だった。反貧困ネット北海道のシンポジウムでもそうだったけど、この中島さんという人は本当によくしゃべる。対談だからシンポジウムよりはいいかもしれないけれど、わざわざ招いた湯浅さんよりしゃべっているんじゃないかと思えるほどしゃべっていた。この年代でアカポスに就くには、これくらいのアピール力がないとダメなのだろうかと思ってしまった。

講演のタイトルこそ「どうする?21世紀の格差と貧困」だったけれど、選挙が終わってまだ1週間も経っていないだけあった、前半はもっぱら選挙結果を受けた話題だった。ちょっと対談っぽく書いてみるけど、録音してたわけじゃないのでかなり適当。言葉遣いとかはフィクションかもしれない。

中島:
選挙結果の感想は?

湯浅:
民主党の議席はもう少し少なかった方がよかった。今後民主党内で左右対立の可能性もあるし、ワーキングプアがいないと言う人までいる。民主党の鳩山さんと会って話したときに、年越し電話相談会で14時間で2万件の相談があったことを聞いて驚いていた。「そういうことに驚ける人」なんだと感心したようだ。鳩山さんには、貧困率の調査を国で行うように働きかけた。

中島:
最近は、内閣発足時の内閣支持率が高すぎる。これまでの支持率の上位を上から並べると、1位が小泉、2位が安倍、3位が細川で4位が福田の順だった。この中で3つの内閣がここ4年以内の内閣で、世論が気分化していることを反映している。そのため、世論はすぐにブレ、支持率は急落する。

湯浅:
支持率は「政権交代」で最高になったら、あとは下がるだけだ。民主党がこれまでと同じように規制緩和路線に行くおそれがある。家計の直接支援が必要だけれど、誰の生活を支えるのかが曖昧で、選挙前には自民党と民主党はお互いにバラマキ批判を行っていた。OECDが加盟国の貧困率を調査して比較した結果、日本は15 %だったが、この貧困率と日本人が考える貧困とは大きなズレがある。日本人は貧困というと、アフリカのような生存ラインに張り付いたような極限状態を思い浮かべる。このことは、日本人が一億総中流だと考えていたことの現れだ。けれども、貧困というのは、例えば、お金がなくて病院へ行けないとか、体調が悪くても仕事が休めないとか、そういうことも貧困だ。今後しばらくは経済成長率は上がらないだろうし、たとえ上がったとしても、経済成長率は国民の暮らしを反映しない。むしろ、貧困率が国民の暮らしの有様を表す指標になる。定額給付金の成果は確認できないけれど、これまで政府が行って来たさまざまな調査の結果を貧困率の調査基準に当てはめれば、十分に利用できる。来賓の上田市長には、札幌市で貧困率を調べてもらいたい。

中島:
派遣切りに遭った派遣労働者が、北海道へUターンラッシュしているが、いったいどれだけの人が戻って来ているのか把握できていない。6月くらいで失業給付が続々と切れるはずだけれど、そうしたデータがないから全く分からない。こうしたデータを政策として調査すべきだ。

湯浅:
東京などで相談会や炊き出しを行って来たが、北海道ではこれから寒くなって、冬の住居の問題がある。アパートへ入れたり親類の家へ泊めてもらえたりする人はいいけれど、そうでなければ路上生活にならざるをえない。札幌市の住宅補助は、36,000円(会場の声から)だけれど、母子世帯も含めて、最後は生活保護しかない。

中島:
民主党は「子ども手当」をマニフェストに掲げていたけれど、配偶者控除の廃止と抱き合わせだ。つまり、どこかを増やしてもどこかで減るので、結局トータルでは変わらないことになり、単にお金を移動しているだけという政策の穴がある。

湯浅:
選挙の争点になった政策が、「誰が必要としているか」「誰の生活を守るのか」という視点が欠けている。今、親の経済格差が子の世代に引き継がれていることが問題だ。

中島:
民主党が行う公務員叩きはまちがっている。そもそも日本政府は「小さすぎる政府」で、歳入歳出が小さく、租税負担率が小さい。

湯浅:
住居の支援などのセーフティーネットは、ハローワークで一本化すべきだ。それなのに、ハローワークの人員削減を行っている。

中島:
日本は公務員が少ない国だ。国民1,000人に対して30人しかいない。アメリカでさえこの倍はいる。しかも、今は公務員にも非正規雇用が広がっている。公務員バッシングは弱いところを叩いている。身近な嫉妬心が引き起こしている。

湯浅:
官対民を強調して来たけれど、公務員が垣根を越えて他と組んで連帯して行くべきだ。

中島:
民主党には思想の軸がない。国によって再配分を行うという社民主義であるはずなのに、マニフェストは縦割りになっている。

湯浅:
自民党の今後は?

中島:
自民党は保守であるべき。左派は理性で問題を解決できると考えるが、保守は人間とは不完全であると考えるので、慣習や伝統といった人知を越えるもので制御しなければいけない。保守とは何かというテーマで講演を頼まれることがある。

湯浅:
「派遣村」ではっきりとステージが変わった。どの政党とも話せるようになった。「派遣村」の発案は労組だった。けれども、労組には炊き出しなどのノウハウがないので、ノウハウを伝える過程で村長になった。

中島:
横の連携がない。

湯浅:
反貧困ネットワークを立ち上げた。障害者は自立支援法が最優先課題だけれど、貧困の問題もある。母子家庭は生活保護の母子加算の復活が最優先課題だけれど、やっぱり貧困の問題もある。ホームレスも多重債務も、最優先ではなくても、貧困の問題は共通している。貧困の問題は共通しているのに、それぞれを支援しようとする運動自体が縦割りになっている。それを団結、連帯させるのが目的だ。

中島:
ホームレスには「再路上」という問題がある。釧路のホームレス支援では、居場所をつくることを大事にしている。こうした居場所のことを、Social Inclusionと呼ぶ。人間関係が大事だ。

湯浅:
大学を追い出されたときの年収は100万円ちょっとだったけれど、どうしようもなくなったら実家へ行けばいいと思っていた。けれども、帰れない人もいる。そうした「ため」が必要だ。

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この後、中島さんは発寒商店街での活動を紹介していた。今回の対談を聞いていて改めて思ったことは、民主党政権に変わったところで、何かがよくなると決まったわけじゃないこと。これからしっかり監視していなければ、自公政権のときよりひどい社会になりかねないし、すぐまた「政権交代」が起こってしまうかもしれない。

貧困について、アフリカの人よりマシとか、餓死してないから大丈夫とか、とにかく、日本人が考える「健康で文化的な最低限度の生活」というのが、あまりにサイテーだということが大きな問題だと思えた。我慢しすぎ。もっと希望を持とう。

対談という形式のためか、話がちゃんとまとまっていなくてポイントが分かりづらかったけれど、貧困は経済的な観点ばかりでなく、湯浅さんが言う「居場所」や「ため」というものが大事なのだと思った。たとえ経済的に苦しくなくても、「居場所」がないことは苦しいはずだ。もちろん、一人で平気な人もいるかもしれないけれど、ほとんどの人は周りの人たちとの関係性の中で生きている。自分に「居場所」があることにホッとする。

ところで、中島さんの言っていた保守は、結局のところ、既得権を温存して、その権力を利用するだけで、民主的とはとても思えない。思想のちがいというよりも、論理自体に矛盾を感じた。でも、まあ、とりあえずは、結果がよければそれでいい。横の連携の役割を果たしてくれるなら。

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