« ONE SHOT ONE KILL | トップページ | 09/11/29 黒岳 »

今も続く核被害の実相

ONE SHOT ONE KILL(特別編)上映に続いて、いよいよ森住卓さんの講演「今も続く核被害の実相~人類は核兵器とは共存できない」が始まった。

森住さんの講演を聴くのは、5年前、イラクで日本人拉致事件があった後に学術交流会館で開かれた講演「自衛隊派遣後のイラク最新情勢を語る『森住卓 緊急イラク報告!』」以来、2回目。小泉政権下で日本人がみんなしてバカ丸出しだった当時が懐かしい。

回想はともかく、スライドショーが始まるのかと思ったら、橋本公さんの制作した動画の上映から始まった。しかも、15分という結構長い作品だった。




見ての通り、1945年から1998年までに2053回も核兵器が使用されている。でも、この映像を見て気になったのは、広島と長崎の原爆以降にも、アメリカが日本で核兵器を使用しているように見えることだ。アメリカ本土のネバダ州における使用が一番多いことは一目瞭然だが、なぜか広島と長崎がかなり明るい輝点となって残っている。いったいどういうことなのだろうか。

世界の核被害の中で、森住さんが最初に紹介したのは、カザフスタンだった。セミパラチンスクには、日本の四国ほどのソ連で最大の核実験場があった場所らしい。放射能で汚染された地域で、住民は放牧を行っているようだった。核兵器の平和利用として土木工事で生まれた大きな穴は、原子の海と呼ばれて生物がほとんど育たない不毛の土地になっている姿に唖然とした。新しい写真集のタイトルにもなっている六本足の子牛が生まれたのも実験場のそばの村。核実験が行われても住民は避難させられることもなく、ソ連は住民の検査を年に二回行うだけだったそうだ。人体実験のモルモットにされたというのが実態らしい。病院の中にホルマリン漬けになって保管されている、障害を持って生まれて来た胎児の標本の数々には、思わず小さなうめき声を漏らしてしまった。医者たちは、核実験の被害の事実を明らかにできるようになったときのために保管していたのだそうだ。

セミパラチンスク―草原の民・核汚染の50年Bookセミパラチンスク―草原の民・核汚染の50年

著者:森住 卓
販売元:高文研
Amazon.co.jpで詳細を確認する

六本足の子牛―カザフスタン共和国 (シリーズ核汚染の地球)Book六本足の子牛―カザフスタン共和国 (シリーズ核汚染の地球)

著者:森住 卓
販売元:新日本出版社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

ソ連の核実験、人体実験が行われたのがカザフスタンなら、アメリカの実験が行われたのはマーシャル諸島だった。第五福竜丸が水爆実験の犠牲になったことから、日本人でマーシャル諸島のビキニ環礁の名前を知らない人はいない。ここでもやはり人体実験が行われたそうで、ロンゲラップ島出身の者は、実験当時住んでいたかどうかに関わらず島に返されて検査を繰り返されたらしい。何より衝撃だったのは、島の子どもたちが飲むヤシの実のジュースには、通常の10倍のセシウムが入っているということだった。マーシャル諸島の10分の1しか原水爆が使われていない本国ネバダ州並みにでも、せめて補償して欲しいと要求しているそうだ。補償済みと言って取り合わないのは、日本の中国に対する戦後補償と構造的に似ていると思った。政治解決では被害者は救われない。

楽園に降った死の灰―マーシャル諸島共和国 (シリーズ 核汚染の地球)Book楽園に降った死の灰―マーシャル諸島共和国 (シリーズ 核汚染の地球)

著者:森住 卓
販売元:新日本出版社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

最後はイラクだった。湾岸戦争とイラク戦争で使われた劣化ウラン弾によって放射能で汚染されてしまった。湾岸戦争ではクウェートとの国境周辺の砂漠地帯でしか使われなかったが、イラク戦争では大都市の人口密集地域でも使用されたらしい。しかも、湾岸戦争をはるかに凌ぐ使用量。湾岸戦争以降、もともとイラクでは珍しかったガンや白血病が増加しているのは、劣化ウラン弾による核汚染が原因だと考えるのが自然だ。

ムスタファの村―イラク共和国 (シリーズ核汚染の地球)Bookムスタファの村―イラク共和国 (シリーズ核汚染の地球)

著者:森住 卓
販売元:新日本出版社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

イラク 占領と核汚染Bookイラク 占領と核汚染

著者:森住 卓
販売元:高文研
Amazon.co.jpで詳細を確認する

講演を締めくくったのは、また橋本公さんの「Over killed」という作品だった。

橋本さんは製作のために秋葉原かどこかでビービー弾を買い漁って変に見られたそうだ。でも、どうせ核兵器を表すなら、どっちかというとパチンコ玉でやって欲しかった。

最後にいくつか質問が出たけれど、核被害の土地を訪ねて歩く森住さんの体調を心配する質問には、写真家はそこへ行かなければいけないから仕方ないというような答えには、さすがに苦笑いだった。命がけの仕事だ。戦場カメラマンとそう変わらないように思えた。

おそらく核被害によると思われる水頭症の子どもたちを「化物」と思えるという会場からの声に対して、森住さんが答えた言葉が印象的だった。「この子どもたちも一生懸命生きている。たとえ、短い間だったとしても。一生懸命息を吸って生きようとしている。」

|

« ONE SHOT ONE KILL | トップページ | 09/11/29 黒岳 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« ONE SHOT ONE KILL | トップページ | 09/11/29 黒岳 »