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火に油

ノマドの宮下岳夫さんのブログが炎上している!?火の粉が飛んで来ないようにここから離れてこっそり油を注いでみる。

本文を読んでたまげた。ノマドに載った挨拶が建前で、ブログが本音なのかと思うような内容だった。こうした方針でも、客は客で割り切って参加するのかな。友達以上恋人未満ならぬ、友達以上ガイド未満になりそうだけど。自分が行ったことがないエリアへ案内してくれるという意味でのガイドなら、案外それでもいいのかもしれない。もともと日本のガイドって、他人の命を預かるにはあまりに割に合わない待遇なんだろうし。

もっとバックカントリー人口が増えて事故も増えれば、さすがに行政も対応せざるを得なくなるかもしれない。夏に比べて激減する北海道の観光客数をバックカントリーで補うことができれば、北海道の経済にとってもプラスになる。世界金融危機といいつつも、ニセコには外国人が溢れていた。日本のガイドも北米や欧州のような条件で働くことができれば、雪崩事故のリスクも減るんじゃないだろうか。

とはいえ、雪崩事故を防ぐには、今の気象台が出す情報は不十分だろう。宮下さんの本文に大雪雪崩警報と書いてあるけど、大雪警報は出ていたが、雪崩警報は出ていない。というのは、雪崩警報そのものが気象庁の警報・注意報の種類に含まれていないからだ。かといって、災害が重大になるおそれがなかったわけではないはずだ。

そこで、事故が起こった後志地方で警報・注意報が出る基準(PDF)を見ると、12時間降雪の深さが50cm以上なら大雪警報、30cm以上なら大雪注意報、24時間降雪の深さが30cm以上か積雪の深さが50cm以上で日平均気温5℃以上ならなだれ注意報が出る。つまり、24時間降雪の深さが30cm以上ならなだれ注意報が出て、12時間降雪の深さが30cm以上に増えれば大雪注意報が加わり、50cm以上にまで増えると大雪注意報から警報に変わるということだろう。

なだれ注意報の基準の積雪深50cm以上で気温5℃以上というのは、春の全層雪崩を想定したものだろう。それ以外は、積雪を調べずに降雪量しか調べないことから、自然発生の表層雪崩を想定しているようだ。バックカントリーで生じる雪崩事故の多くが、積雪内部の弱層を破壊して起こる人為的誘発の表層雪崩によるものだということに対応していないように思う。

研究によると、例えば、斜度が35°では、1時間に8cmの降雪が3時間続くと雪崩が自然発生するという計算結果が得られているらしい。出典はメモってないけど。12時間降雪に直せば96cmとなる。大雪警報基準の約2倍に相当する。もちろん、斜度が35°より急なほど雪崩れやすいし、刺激があればより少ない降雪でも雪崩れやすいだろう。そうだとしても、気象庁の大雪警報やなだれ注意報は雪崩リスクマネジメントの参考にはなっても、入山を中止する決定的な理由にはならない。ここら辺の認識が、雪崩のことを少しでも知っているかどうかで変わってくると思う。宮下さんの山岳事故をなくすには、山へ出かけないのがいいでしょう!という言葉も、同じような理由から発したものなんじゃないだろうか。

また、雪崩の危険回避のための具体的な基準を気象庁に定めようとしても、今度は気象庁が事故発生時に責任を問われかねないので、絶対に実現しないだろう。「悪しき官僚体質」というやつだ。北米や欧州のような雪崩予報の実現には、乗り越えなければいけない壁がたくさんあるように思う。残念ながら、今のところとりあえずは、自己責任にならざるを得ないのだろう。

そういえば、2年ほど前に上ホロで雪崩事故が連続したあとで、「スキーヤーが雪崩に遭って死ぬのは腹上死と同じだ!」と書いたことがあった。表現は不謹慎でも、それほど外れていないような気がする。Sugar daddyが雪崩れたら世話ないなぁ。でも、ツアーの場合は、責任をなすり付け合うことになりそうだ。結局、日本のガイドがどうあるべきかというのが大きな問題であって、トムラウシ山の事故を契機に真剣に議論されなければいけない問題なのだと思う。果たして、どこへ向けて前進することになるのだろうか。

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コメント

若干そのトリガーを引いてしまった気がします。。。

ぼくも,本音だとしてもこれはあまりにもひどすぎると思い,余計なこととは思いつつも指摘してしまいました。ちょっと今までは氏を知らずに過大評価してしまっていたように思います。いろいろな意味で残念です。

投稿: naokiss | 2010年1月19日 (火) 19時18分

>naokissさん

某ブログにコメントを書き込むのを思いとどまったあとに書き込まれたnaokissさんの指摘を読んで、その通りだと思いました。山岳事故を減らすために、登山文化への社会の理解を広げなければいけない時だと思っていたので、とても残念です。本音を言わなければいいわけではありませんが、自分の立場を自覚しない不用意な発言が、最近の政治家は特にですが、多すぎると思います。「本音」が分かってしまった今では、ノマドがよほどの取り組みを行わない限り、まともな山岳ガイド会社としてもう信用できません。知り合いに薦めることはないでしょう。

投稿: H本 | 2010年1月19日 (火) 20時34分

私も宮下氏のブログを見て呆れました。
書き込み後2日程で閉鎖されましたが、下記のURLでそのままのページが読めます。

http://megalodon.jp/2010-0118-2345-43/nomami.e-powder.net/e5494.html

投稿: rusutsu | 2010年1月27日 (水) 09時17分

>rusutsuさん

ウェブ魚拓のURLをわざわざ教えてくださってありがとうございます。
ただ、投稿からそれほど時間が経たないうちに記録されているので、ブログ閉鎖までに書き込まれたたくさんのコメントがあまり残っていません。コメントでのやり取りから浮かび上がる今回の雪崩事故の問題点もあったように思います。残念です。

投稿: H本 | 2010年1月28日 (木) 07時27分

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