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コース外のガイド

今朝、「“パウダースノーの聖地”を守る」の再放送を見ながら、コース外のことをちょっと考えた。

ニセコのスキー場からコース外へ出るために守らなければいけない決まりが、ニセコなだれ情報を基にしたニセコルールだ。ニセコ雪崩調査所がゲートを開けなければ、基本的にはスキー場からコース外へ出ることはできない。もちろん、パトロールの監視の目をすり抜けてロープをくぐるルール違反もしようと思えばできるのだろうけど、番組を見た限りではちゃんとルールが守られているようだ。

改めて考えてみると面白い。どこのスキー場にも、コース外へ出て滑ることは禁止だというルールがもともと決められていたはずだ。そのスキー場のルールが守られなかったのに、新しく作られたニセコルールが守られている。何となく常に全部禁止するより、危ない場所と危ない時だけ厳しく禁止すれば、ルールを守る人が多いようだ。子どもにあれもダメこれもダメというより、ちゃんとルールを決めて守らせる方がいいのと同じなのかな。パウダージャンキーの頭は子どもなのかも。

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ただ、映像を見ていて気付いたけれど、スキーやボードなど、滑るための道具しか持たずにゲートを通る客がほとんどだった。コース外の雪崩リスクに対する客の認識は深くなっているのかもしれないけれど、コース外の冬山としての危険に対する認識は深まっていないように感じた。コーズ外ではロープや標識がないので、道に迷うことも珍しくない。

実際、4シーズン前、当時のニセコローカルルール2006年度版に従って「ロープの切れ目」からコース外へ出てアンヌプリの山頂まで登ったけれど、下山で迷って苦労した。たまたま視界が晴れたときにルートをまちがったことに気付いたからよかったものの、一つ沢をまちがえたまま下っていたら大変なことになっていたかもしれない。5人のうち誰も冬山の装備は持っていなかった。食料も水もない。雪洞を掘ろうにもスコップもない。今考えればゾッとする。

ニセコルールは雪崩リスクを軽減することはできていたとしても、いろいろある冬山リスクまで減らしているわけではないということを自覚していないと、痛い目に遭うように思う。スキー場のコース外は冬山だという認識が広がらないまま今のようにコース外を滑る客が増えると、今度は雪崩以外の事故が増えるように思った。

そんな風に思ったのは、先日ルスツでガイドがコース外へ客をガイドしているのを見て驚いたからだ。まるでファットスキーの試乗会でもやっているかのように、みんな少なくともセンター100 mmはあるファットスキーを履いた20人くらいの一団が、リフトから見下ろせるコース外で客の撮影をしながら滑っていた。帰る時、駐車場でNiseko Ski Toursの車を見つけた。車の前でゾンデを伸ばして遊んでた。コース外で見かけた一団かどうかは分からないけど、競争率が高いニセコからルスツへ流れて来たのかもしれない。

また、今月送られて来たパドルクラブのDMには、尻別岳で雪崩事故を起して客を1人死亡させたガイド会社ノマドの代表でありガイドでもある宮下岳夫さんのガイドで、2/28(日)にキロロ スキー場外パウダーが行われると書いてあった。パドルクラブ札幌店のイベント情報としてキロロなんちゃってパウダーツアー(初級者編)と紹介されているので、おそらくキロロのコース外でパウダーを滑るんだと思う。

ルスツルールやキロロルールなんて聞いたことはない。コースの端にはロープが張ってあり、「立入禁止」という文字やドクロマークなどが描かれた標識が立っている。コース外滑走禁止のアナウンスも何度か聞こえる。ニセコとは異なり、コース外は原則立入禁止のはずだ。スキー場が禁止している行為を客にガイドするのはすごいことのように思う。DMには堂々と書かれているし。

案外、スキー場としては、ガイドがいればコース外でも「安全」だからいいと思っているのかもしれない。リフトに乗るならリフト券も売れるし、レストランで食事をするかもしれないし、事故が起こった時もガイドが責任を取るなら、逆にスキー場の知名度が上がったりして、スキー場は損しないだろう。ガイドだって、お手軽なスキー場外パウダーを通して常連客を増やして、その後にレベルの高いバックカントリーツアーに参加させたいにちがいない。客の安全とは関係ないところで嫌らしい駆け引きが行われているのかもしれない。

ガイドによるコース外ツアーとは別に、山スキーではリフトを利用して標高を稼ぐ方法はもともと一般的だったようだ。札幌国際やキロロのゴンドラ降り場には、入山届が設置されている。立入禁止の標識とロープがあっても、スキー場からの入山規制については、かなり曖昧なようだ。責任の所在が曖昧で、原則自己責任というのが日本的だと思う。シーズンに何度か遭難事故が起きていても、スキー場が責任を問われているようでもない。おそらく、昔のニセコもそうした曖昧な状況で、雪崩事故が起こっていたんじゃないかと思う。

もし、キロロなんちゃってパウダーツアー(初級者編)で事故が起きたらどうなるだろうか。ガイドが立入禁止区域に客を連れ出して事故を起したなら、尻別岳のような完全なバックカントリーとは比較にならないほどの激しい非難を浴びるような気がする。スキー場のコース外も含めたバックカントリーを取り巻く環境整備が進まないなら、北海道のバックカントリービジネスはいつ崩壊してもおかしくないんじゃないかと思う。まあ、いっそ、そんなビジネスは壊れてしまった方がいいかもしれない。なんちゃってガイドツアー(初級ガイド編)もなくなるだろうし。

2月に恒例の研究室OBスキーツアーでニセコへ行くことになったので、とりあえず、次のようなメールを送った。送ってから1時間半経過したが、まだ誰からも返事がない。

もしも1人ではぐれても一晩くらいはしのげるように、非常食と水(温かい飲み物)、防寒着など、自分の生への執着に合わせて装備を選択してください。ビーコン、スコップ、ゾンデの雪崩対策三種の神器がなくても、とりあえずは仕方ありません。雪崩で埋まってもセルフレスキューができずに、自分や仲間が死ぬだけですので。

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