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シルクロード‐人間の貌

「キヤノンフォトコレクション『シルクロード‐人間の貌』」長倉洋海 写真展ギャラリートークショーに行って来た。

長倉さんの写真展へ行くのは、5年前の紀伊国屋札幌本店のオープニングイベント以来だ。水俣病記念講演会に長倉さんも来ていたので、話を聞くのは3年ぶりだ。写真展を観に行くのこそ久しぶりだけど、しばらく週間金曜日で毎週作品を観ていたので、そんなに久しぶりという感じはしなかった。

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キヤノンギャラリー札幌へ行くのは初めてだった。道庁の向かいの高いビルの1階にあって、場所はすぐ分かった。5日間開催される写真展の初日。トークショーの受付が始まる17時半前になる前に、会場は観客で混雑していた。ギャラリーはそんなに広くない。展示されていた作品も37点だったようだ。東京の50点からさらに長倉さんの印象に残った作品を厳選したと話していた。

気に入ったのは「氷上の少女」。薄らと雪化粧をした山並みを背景に、湖の水の上を歩いているように見える作品。この写真が載っている写真集を買ってしまった。でも、製本の都合で上下がカットされていて残念。プリントとは印象が結構ちがってしまっていた。でも、せっかくなので、サインしてもらった。

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ギャラリーには「週間読書人」の長倉洋海氏インタビューが展示されていたので、つい読みふけってしまった。フォトジャーナリストとしての人生について、インタビューを通して紹介されていた。やっぱり写真は何を撮りたいのかが大事なのだと思う。

サインをしてもらった直後にトークショーが始まった。写真に写った人の視線の先にあるもの。瞳に映るもの。写真を観る人の想像力をかき立てる写真が、長倉さんの考えるいい写真だという。シルクロードの写真でも、「長倉洋海が見たシルクロード」なのだと話していた。人それぞれが見たシルクロードがある。

今回のシルクロードの撮影は、NHKスペシャルの新シルクロードのために依頼されたらしかった。すでに長倉さんの友人となっていたマスードを暗殺で亡くし、何を撮ろうか分からなくなっていた頃だという。高山病にかかりながらもアフガニスタンへ陸路で辿り着くことで、それまでとはちがうものを感じたかったそうだ。若い頃にピューリッツァー賞を目指していたのは知らなかった。ジャーナリストならみんな目指すのかな。

話題はいろいろだったけれど、国の名前が「タン」で終わる国は、賄賂の国だというのは面白かった。給料が安く、体制も不安定なため、唯一信頼できるお金を賄賂で増やして貯める。シルクロードの端の端。文化の影響を受けた日本も、確かに基本的には同じような傾向があるように思える。

トルコなど、シルクロードのまわりでも、若者が町に出て行ってしまい、高齢化、過疎化が進んでいるそうだ。そんな田舎の村に取り残されたおばあさんが、昔の日本のおばあさんと重なって感じるらしく、話す様子が楽しげに見えた。その一方、チベットの遊牧民ですら今では携帯電話を持っているそうで、シルクロードもすっかり様変わりしてしまっているようだ。

ゲリラと行動をともにしていると、写真を撮りたいときでもカメラを取り出せずに悔しい思いもしたそうだ。他にも撮りたいと思った一瞬を逃してしまって後悔するということはあるそうで、昔は撮らせてくれないとすぐにあきらめたけれど、今は粘って何度もお願いして撮らせてもらうこともあるらしい。その一方で、撮るのを断られた人にもカメラをしまって話を聞いて打ち解けるそうだった。大事なのは撮ることだけじゃないんだな。

今回は従来のギャラリートークショーのように、作品を見ながら回るスタイルではなく、イスに座って話を聞く講演会スタイルだった。スライドトークショーならこれでもいいけれど、写真が展示されている会場なら、従来通りの方がよかったと思う。司会の人が、「会場で写真集を買うと、今ならもれなく直筆のサインがもらえる」と話したのには、さすがに長倉さん本人もツッコミを入れていた。

最後に宣伝していたけれど、長倉さんのフォトジャーナリストとして30年の作品をまとめた「地を駆ける」が、最近の出版不振を受けて、ずいぶん売れ残っているらしい。電話帳のように分厚くて読み応えがある。

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おそらく一番新しい写真集の見本が置いてあった。最初に子どもの写真で有名な田沼武能さんからのメッセージが載っていた。この写真集の写真は大きくないけれど、作品数だけは相当な数だった。

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そういえば、6年前に田沼さんの写真展を観に行った札幌市写真ライブラリーは、今年初めに閉館してしまった。富士フィルムフォトサロン札幌もなくなりかけたし、北海道のフォトギャラリーは存亡の危機にあるのかも。これも出版業界の不振同様、インターネット普及の影響だろうか。今じゃ簡単に自分の作品をたくさんの人に観てもらえるようになったから。

けれども、長倉さんがインタビューの記事で語っていたように、誰でも携帯電話で簡単に写真が撮れるようになった今だからこそ、本当にいい写真を撮れるかどうかが大事になっているのだと思う。いい写真撮りたいなぁ。

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