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死を意識するということ

講演会「雪崩から身を守るために」で大西さんがサイドカントリーについて話すと聞いたので、かでる2・7まで出かけて来た。

第1部から参加したかったけど、さすがに平日18時からは無理。あきらめてちゃんと晩ご飯食べてから会場へ向かった。19時15分前には会場に着いたので、尾関さんの『雪崩発生のメカニズムー雪をみて危険を知るにはー』を最後の方だけ聞くことができた。

去年までの秋田谷先生と今年から替わったみたいだけど、とても分かりやすかった。最初から聴いてた人も、「もっと早く替わればよかったのに」って話してたので、半分以上聞き損ねたのが残念だ。

その後、秀岳荘の栃内さんが道具の説明をした。実は栃内さんをちゃんと見たのは今回が初めてだけど、想像以上に面白い人だった。ビーコンも雪崩エアバッグも実演は何とも言えない「栃内ワールド」が展開されていて魅力的な人だと思った。ちなみに、デモで使用されたBCAの雪崩エアバッグには、BCAのロゴが入っていなかった。まだ買えないけど、雪崩エアバッグを買ったら痛くしたい。

休憩時間に会場を見渡すと、見覚えのある顔があっちこっちに。あいさつしてるとき、大西さんから発表の撮影をしていいと教えてもらった。あっ、そういえば、GoProを頭に付けて講演聴くとかってツイートしてたっけ……。

そう。そんなことはすっかり忘れていた。撮影していいよと言われたので撮影しなきゃいけないような気がするけど、カメラがない。と思ったら、カバンにコンデジが入っていた!三脚もないので、テーブルにケースとガムテで適当に固定して撮ることにした。

第2部、はじめに話した上石さんは声が小さくて聞き取りづらいし、大西さんが後で詳しく話すと連発していたので、こちらも何となく流して聞いた。いよいよ大西さんの報告が始まるので、カメラの電源を入れて構える。

始まった大西さんの発表は相変わらず素晴らしい。Keynoteのアニメーションを使いこなし、Google Earthやら他のアプリケーションで作成したムービーとやYouTubeの動画と組み合わせて、いつもながらすごい。これを見てたらPowerPointなんて使う気にならない。

肝心の報告は、今回の猫魔ヶ岳雪崩事故は北大山スキー部が起したと聞いてはいたけど、道外の全然知らない山だったから、そんなに関心はなかった。だいたい名前が猫魔ヶ岳ってデーモン・キャット・ピーク?なんとなく中二病臭い名前だし、裏Bandaiって、エロアニメっぽい。ところが、実はサイドカントリーに関わって起こった事故らしくて、実際、POWDER SKIのツリーランコースガイドでも、この裏磐梯猫魔スキー場が紹介されいる。とても興味深い。

今回の報告を聞いていると耳が痛い点が多かった。どうやら、スキー場の管理区域外まで、バックカントリーではなくサイドカントリーだという認識で滑っていたのが、そもそもの原因のようだ。

シールなどの登行の装備を持たないのはもちろん、雪崩レスキュー装備も一切持ってない。滑走禁止区域であるコース外にロープをくぐって出て滑り、スキー場の上部の管理区域外の猫魔ヶ岳西峰へはつぼ足のハイクでアプローチ。冷静に考えれば危ないのは分かるけど、こんなことはみんなよくやってることで、大きな声じゃ言えないけど、たまたま事故に遭ってないだけなんだよな。実際、大西さんがYouTubeで公開されているこのエリアの動画には、たくさんのトレースが写っていた。

あえて身近なエリアで例えるなら、札幌国際スキー場なんか典型的。通称「ブロードウェイ」。誰が呼び始めたか知らないけど、毎シーズン、ロープくぐって滑ってる人は数知れず、帰りのトレースもばっちり付く。朝里岳方面へ少しハイクしてから沢の反対側を滑る人たちもやっぱりいる。何て呼ぶか覚えてないけど、こっちは完全なバックカントリーだ。

猫魔で山スキー部はバックカントリーを滑っているという緊張感もなくて、アバランチパスに先行の2人が待機していて、後続が誘発した雪崩に巻き込まれているあたりなんか、普通では考えられない。サイドカントリーの油断。でも、これはバックカントリーでも油断から起こりうることだから、他人事だと笑えない。

滑る側にかなり問題があったようだけど、この事故を報道したメディアやスキー場もひどかったらしい。事故が起こったのはスキー場からハイクアップした管理区域外なのに、コースとコースの間の滑走禁止区域だと誤った報道をして、被害者をディスりまくっていたそうだ。スキー場と経営している星野リゾート へコメントを求めても返事はなかったらしい。星野リゾートってトマムと同じじゃないか……

大西さんはこの事故は雪崩リスクが非常に高いバックカントリーで起こった事故だと思うと話していた。

業界がサイドカントリーという曖昧な表現を使うようになったのはここ2、3年だと思う。自分でもふざけてサイドカントリーという言葉を使っていたけど、実際に滑っているときまでふざけた気持ちでいると、今回のような事故に遭いかねない。

バックカントリーが裏なら、サイドカントリーは横。スキー場の横、スキー場のコース横という意味にとれる。コース脇というよりは、コース脇のロープをくぐって出たコース外のイメージ。つまり、一般的には滑走禁止区域なんだと思う。禁止しているという意味で管理区域なのか?パトロールの経験ないから詳しいことは分からないけど。オフピステの深雪コースや上級者向けコースとちがい、コース外には自己責任で滑るというルールすら適用されないはずだから、そもそもサイドカントリーの滑走は違反行為だというのが自分の認識だ。

業界が言っているサイドカントリーがコース外ではなく、滑走可能な深雪コースなのか、逆にバックカントリーなのか、結局、この点が曖昧でグレーゾンになっていて、ちょうどそこを狙って商売に結びつけようとしているように見えなくもないから嫌らしい。

そんなことを考えはしたけど、講演会最後、カリスマ阿部幹雄さんの話は相変わらずだった。「自然を畏れなさい」みたいな信者向けの話が始まってしまったのでアンケートに記入していたら、実は「死を意識しろ」ってもう少し具体的な話になっていたようだ。とはいえ、事故に遭った山スキー部に対して大西さんと一緒に聞き取りを行った阿部さんは、「残念だ。……彼らはきっとまた事故に遭うだろう。」みたいなことを話していて、こっちは口あんぐり、かすかに苦笑がもれる。だけど、その後、「これからもどんどん山へ入れ」と話すので、ますます話について行けなくなる。何度も山へ行って死を身近に感じるようにってことだったらしいけど。阿部さんは背負っているものが自分たちとはちがうので、きっと別の世界を生きているのだろう。そう思ってしまった。

でも、セクシィー映画鑑賞会でまどマギ劇場版を観た後だったので、「死を意識する」という意味がよく分かった。ただ、詳しく話すとネタバレになっちゃうので、クラスのみんなには、内緒だよ。

【2012/11/18 追記】
調査へ行った方から記述について指摘のメールがあったので書き足します。1つ目は、マスコミの報道はスキー場へきちんとした取材なしに行われたものだとスキー場パトロールは話していたそうです。2つ目は、マスコミからの質問攻めにあっていた事故被害者に対してパトロールは誠実に対応していたそうです。スキー場の主張とは関係なくマスコミが自分たちのシナリオで煽った記事だったのかな?

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コメント

阿部さんが背負っているものもH本さんが背負っているものも一緒です。
自分の命です。

「自然を畏れなさい」
絶対古くならないですよ。

第3者的に見てかなり危ういラインに立ってると思うので
シーズン前にスイッチ入れなおしたほうがいいですよ。

とここ数年のH本さんのようすをネットを介してみて
危惧を感じている友人からでした。

投稿: やっち | 2012年11月15日 (木) 23時05分

>やっちくん

冗談にしか聞こえないかもしれないけど
阿部さんは自分の命以外にもたくさんのもの背負ってるような気がするよ。
意識としてね。

「自然を畏れなさい」は
古いどうこうって話じゃなくて
自分のようなタイプの人間には考え方が合わないんだよね。
そういうので納得できる人はそれでいいんじゃない。
否定はしないよ。
リスク低減へのアプローチの仕方は自由だから。

自分で自分を客観的に見て危ないと思ったから
バフンでスイッチを入れ直したよ。
今回は自分にとってそういうイベントだった。
「自然への畏れ」ではなくて
ヒューマンファクターというもっと具体的に理解できることとして
参加者にも伝えたつもり。

先シーズン自分も仲間も死ななくてラッキーだと思ったので
ちゃんと反省して臨むよ。
心配かけてごめんね。
もうやっちくんを不安にさせたりしないよ。

投稿: H本 | 2012年11月16日 (金) 00時03分

「自然を畏れなさい」は言い回しが古いだけで,
コンセプトは古くないとおもうよ.
リスク軽減の意識付けをどういうスキームでやるか,という話.

猫魔は雪質ばっちりなのよ.
今年は久しぶりに滑りに行きたい.

投稿: rho | 2012年11月17日 (土) 04時32分

>rhoさん

「自然を畏れなさい」と大西さんの事故報告の後で言われると
そこまで戻るのかっ!?
って思っちゃいますけどね。

猫魔のお手軽BCは楽しそうですね。
今シーズンこそRocker2に乗りまくらなきゃ。

投稿: H本 | 2012年11月19日 (月) 12時01分

「自然を畏れなさい」について。

人類の歴史を勉強すると、何度も自然に打ちのめされてきたことがわかる。過去の失敗から少しは学び、テクノロジーによって命を守る術も身に付けてきたが、それでも未知の怖いことがいっぱいある。つまり、人は自然を「恐れる」。「恐れる」から備える。だけど、自然を嫌いにならず、その魅力に惹きこまれてきたし、恩恵を受けていることにも気がついた。だから、人は自然が自分たちを生かしも殺しもするほど大きな存在なのだと「畏れる」。

どんな気持ちを持とうとその時そこにいれば災害に遭うのも現実だけど、こうした心構えを持っているかどうかで、楽観や過信などのヒューマンファクターによるリスクを減らせる可能性が高いし、それだけ覚悟する習慣も身に付く。

一方、自然を怖がってばかりだと、そのうち自然が嫌いになる。大切な人を奪われたら自然が憎い。自然のマイナスの側面しか見えなくなってしまう。自然をうまくエンジョイしている人たちに対する無理解や批判も生まれ易い。だけど、自然がくれたもの(山に行った時の感動とか仲間とか、山でしか学べないこととか)に感謝する気持ちを忘れないなら、リスクと共に自然を楽しめそうだ。自然のもたらすプラスとマイナスの両面をバランス良く見つめて、みんなが自然を安全に心から楽しめる世界になってほしいから、阿部さんは「畏れる」という言葉をあえて伝えたいんじゃないのか。いたたまれない命の現場を数多く目の当たりにしてきて塞ぎたくなる自分の心にも言い聞かせているようにも思う。

何とかして山に行きたくて、山でのヒューマンファクターを洗い出そうと努力している時点ですでになにがしら山を畏(恐)れていると言っていいと思うぞ。表現は古臭いけど、宗教とは話が違うだろ。

投稿: O | 2012年11月29日 (木) 09時07分

>O

「自然を畏れなさい」には共感してる人が多いみたいだし
これって考え方というか心の問題なので
ここでわざわざこれ以上具体的に説明する気はないな。
阿部さんがそう言って事故が減るならそれでもいいと思うから。
そもそも阿部さんの言葉に違和感を覚えるような人なら
もう自分なりのやり方で対応してると思うしね。

それでも敢えて一言説明を付け加えるなら
「愛がなくてもセックスはできる」
かな。

阿部さんの言葉について記事に書いたのは
単に阿部さんのいつものやり方が気に入らないから。
もし自分が雪崩事故に遭っても
雪崩事故防止研究会からの聞き取りは断固拒否する。
2ちゃんで叩かれた上に
かでる2・7で阿部さんにまで叩かれるのは嫌だ。

とはいえ、最後の
「山でのヒューマンファクターを洗い出そうと努力している時点ですでになにがしら山を畏(恐)れている」
には納得いかないな。
行動時の心理と自然への畏敬や恐怖という感情とを
区別せずにごちゃ混ぜにしているように感じるんだけど。
阿部さんの言葉にはこういうミスリードの危険性があるから嫌なんだ。
ちゃんと分けて考えるべきだと思う。

投稿: H本 | 2012年11月30日 (金) 12時03分

>H本

畏"敬"とまでは言ってないけど、最後の部分は若干話が飛んでしまった、すまない。たしかに、敬う気持ちは人から強制させられるものではないね。

>「愛がなくてもセックスはできる」
このへんは個人の哲学かもしれない。俺は「愛がなくても子供は生まれるが、愛があった方がみんなが幸せになれる」と思う。

少なくとも阿部さんは人の心のあり方を批判するために講演会を行ってるのではないと思うぞ。万が一そうでも、何をおそれる必要がある?その心の批判が妥当なら怖い(自分が傷つく)けど、そうでないなら周囲の目を気にしないで共通のもっと大きな目的のために協働すべきじゃないか。

投稿: O | 2012年12月 1日 (土) 06時38分

>O

ただでさえ雪崩事故に遭ってショックを受けているときに
阿部さんの後輩でもないのに
「自然を畏れてないからまた事故に遭う」なんて言われたとしたら
自分だったら立ち直れないかもしれない。
たとえその後に「どんどん山へ行って欲しい」とかって
ツンデレ発言があったとしても全然萌えない。
そもそも阿部さんと共通のもっと大きな目的とかないから、たぶん。

投稿: H本 | 2012年12月 3日 (月) 12時08分

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