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Vector Glide Genius 185

思えばGenius(テレマーク)についてちゃんとまとめていなかったので、5シーズンたっぷり乗った上でレビューを書いてみる。

今回も結論から言うと、テレマークに限っては、Vector Glideらしくない柔らかくて乗りやすい板で、万人に勧められる板だ。逆に、アルペンでは柔らかすぎるかもしれない。乗ったことないけど。

初痛板

コンディション別に細かくみていくと、まずはもちろんパウダーでの乗り味。なんといってもセンター130mm。トップは155mmもある。トップとテールのきつ過ぎないロッカーと尖った形状のおかげなのか、スピードに乗るのがとにかく早い。以前乗っていたK2 Pontoonとは比べものにならないほどの初速を得られる。つまり、標高差をあまり確保できない裏山のような小さな斜面でも楽しめるということだ。

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Photo by Joh Kobashi

低山でも楽しめるのは、Geniusの柔らかさによるスキーのたわみやすさ、ターンのしやすさも大きな理由の一つだ。テレマークスキー特有の能動的なターンに板がしっかりと付いてきてくれる。アルペンスキーではセンター130mmクラスのファットスキーだと板に乗せられている感覚が強くなるが、ピンテール特有の抜けの良さのおかげで板を左右に振りやすく、ファットスキーとは思えない小回りのしやすさだ。Pontoonがいい板だったにもかかわらず手放したのは、小回りが大変で急斜面でハイスピードで滑らないと楽しめなかったことが大きい。低山のツリーランを好む自分には向かなかった。

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Photo by OTA

パウダーが重くなっても太さとロッカーのおかげで進まないということはほとんどない。逆に、シーズン初めに軽い雪がベースがない上にたくさん積もっているような場合には、斜度が緩いと埋まって止まってしまうこともあったが、パウダーが重ければかえって浮力を増して、他の板ではトップが取られて滑りづらいような場合でも、問題なく滑れる安心感がある。

パウダーにおけるデメリットを強いて挙げるならば、板の柔らかさ、軽さによる安定感の低さだろう。トラックがたくさん入ったパウダーではかなり不安定になる。Pontoonのような走破性はない。今シーズン、Vector GlideのButter KnifeにMetalが追加されたことは頷ける。ゲレパウでの安定感を求めるなら、Geniusにもより張りをもたせたモデルを欲しい人がいるにちがいない。とはいえ、テレマークで使うことを考えれば、ゲレパウでの安定性のために張りを出せば、そのデメリットの方が大きくなることが予想されるので、オールラウンドに楽しむには今のセッティングが最適だと思える。

もう一点。スピード出し気味で滑るときには、トップの浮力が大きすぎて、テレマークではトップが上がるのを押さえるのが難しい。スピードを出すには板の中心にフラットに乗るべきだが、後ろに下がりがちなテレマークでは前に乗る意識が必要になる。ところが、前に乗ると踵側の加重が甘くなるため、浮力に負けてトップが持ち上がってしまう。

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これを避けるには、バインディングのO1のカートリッジをソフトフレックスから1段階硬めのミッドスティフへ交換して、踵を上がりづらく、この場合、板のトップが上がりづらくすることが対策として考えられる。ただし、その場合、今度は内足のトップが下がって刺さりやすくなるというデメリットもあるので、前後のスタンスを広げて外足(前足)を大きく前に出して踵を押さえるしかないのだろう。滑り方としてこれからの自分の課題だ。疲れるからスタンスは広げたくないが、スピード出すなら仕方ないのか。

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Photo by OTA

若干、話は逸れたので、Geniusのレビューに戻って整地での滑りについて。そもそも、センター130mmのファットスキーで整地を滑るのがまちがっているのだけど、Geniusの良さは整地のカービングもそれなりにできて、結構楽しめるところだ。ロッカーが入っているとはいえ、柔らかくてたわみやすいので、テレマークの内足でもちょっと踏んで傾けるだけで角付けができる。角付けさえできれば、あとは加重のコントロールでターンを調整するだけだ。ただし、やはりセンター130mmでは、内足のねじれを抑えるのが大変だ。ブーツはスカルパT1クラス、バインディングもBDのO1クラスでなければ、内足にしっかりと乗るのは難しい。できればNTNの方がいだろう。

テレマークとしては反則みたいなものだけど、アルペンターンするのであれば、ポジションがアルペンよりも後ろである違和感を除けば、ほとんど問題なく気持ちのいいカービングができる。むしろ、アルペンで乗ってみたい。とはいえ、ピンテールとテールロッカーの悪影響はあって、ターン後半を引っ張ると、どうしても粘らずに抜けてしまう。あまり深いターンをせずに、適度なタイミングで切り返すようにする方が、カービングスキーとして楽しむことができる。

これまでは整地での大回りだったが、小回りはどうか。もちろん、キレッキレのターンは無理だ。ところが、ずらして滑るなら案外、小回りもできてしまうのがGeniusのすごいところだ。

小回りができるので、コブも滑れてしまう。アルペンではセンター130mmクラスの板でコブを滑るのは、溝が狭くてかなり厳しいが、テレマークでは実質片方の板でしか溝を通らないので、130mmあっても意外と気にならない。板の柔らかさのおかげで、コブの溝の中でもしなやかにたわんでくれるため、センター幅がより細い板と比べてもそれほど遜色なく滑れるほどだ。このことからも、Geniusのテレマークへの相性の良さとセッティングの絶妙さに舌を巻く。

センター幅が広いため、角付けができない不整地では不安定なのは確かだ。ただ、小回りをして板をたわませれば、エッジがしっかりと雪面を捉えて、コントロール不能に陥るようなことはない。クラスト斜面でも然り。ここが先日のMake BCとは決定的にちがう。ずらして滑る板とGeniusのコンセプトとはまったく異なっていると言えるだろう。確実なエッジングによるコントロール性とピンテールの抜けによる回旋性を両立させているファットスキーの傑作だ。

Make BCのインプレにも書いたが、Geniusのあまりのパウダーの滑りやすさ故に、滑り手の技術が向上しない、下手になるという問題はある。パウダーを滑っていて他の板で感じる難しさから、この1本に乗っているだけで解放されてしまう。「Geniusだから滑れる」という状況を受け入れられるかどうかで、この板に乗るかどうかを決めるべきだろう。

逆に、Geniusに乗る以上は、Geniusでしかできない滑り、「Genius名人の先」の滑りが求められることになるかもしれない。プロテレマーカー永島さんの「Geniusに乗るとテレマークが下手になる」という言葉で、Geniusから離れてしまったテレマーカーも少なくない。自分自身、永島さんから与えられた課題と向き合ううちに、スノボのGeniusにまで手を出してしまったことを考えると、Geniusの真価とは、滑り手の技術を単に補うのではなく、より高い次元の滑りへの欲求を生み出すことにあるのではないかと思えてしまう。「非凡な才能」への成長を促す薬のようなものなのかもしれない。

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