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複合汚染

津端夫妻がたびたび自著の中で触れていた「複合汚染」を読んでみた。

有吉佐和子の「複合汚染」は、ウィキペディアに“レイチェル・カーソン『沈黙の春』の「日本版」にも例えられる”とも書いてあるように、自分が生まれる前に書かれた、当時の環境問題を扱った小説だ。確か、大学に入ってから「沈黙の春」は読んだけれど、「複合汚染」は読まないままにきてしまった。津端夫妻の考え方や生活にも大きな影響を与えたと知っては興味が湧くので、40年以上も前に出版された本に目を通すことにする。

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小説の初めは市川房枝らの選挙活動に協力する様子を描いていて、政治小説なのかと思った。ところが、しばらく続く選挙活動の様子は、実は、その後で次々と語られる様々な環境問題の紹介を行うイントロにすぎなかったようだ。100ページほど読み進めると、いつのまにか舞台は選挙カーから移って、農家や学者、御隠居などなど、様々な人たちとの会話を通して、農薬や合成洗剤などが複雑に絡み合った複合汚染の被害について、次々と明らかにされていく。

おそらく、専門家が環境問題について書いた本なら、こんなに面白くはなかっただろうと思う。新聞連載時の読者は面白いとは思っていなかったようだけど、例えば、御隠居との漫才のようなやりとりなども、有吉佐和子がただの小説家ではなく、演劇の脚本なども手がけていたと知って、なるほどと思う軽快さと面白さで、被害の様子が深刻でも、つい笑いが込み上げてくる。複合汚染の恐ろしさを感じながらも、読み進めるのを負担に感じるどころか、次の話題が楽しみになるような文章だった。小説だと思って読むと違和感はあるけれど、漫画で学ぶ〇〇的な入門書のような印象で読みやすい。

農薬は今でも使われ続けているし、ポストハーベストも残っている。農薬は新しくなり、遺伝子組み換え作物と一体となったものまで登場している。一方、農家は自分で食べる野菜などには農薬を使わないのは変わっていない。合成洗剤は今も使われ続けている。自動車の排気ガスへの規制は厳しくなったけれど、車の台数は40年でかなり増えたことだろう。

「複合汚染」の時代から状況は改善しているのだろうか。むしろ、悪化しているかもしれない。原発は事故で放射性物質を撒き散らし、マイクロプラスチックという新たな問題も注目されている。有吉佐和子が亡くなってから30年あまり。月並みながら、彼女がもし今の日本を見たらどう思うだろうか。

自分で土を作り、野菜を育ててみたいと思うようになった。もちろん、農薬も除草剤も化学肥料も使わずに、自分のうんことおしっこで堆肥を作って。津端夫妻の思いに少し近づいたのかもしれない。

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