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ミールカード

確か昨年度から北大生協に導入されたミールカード道新でも紹介されたらしいが、ちょうどこの時期に購入を勧める広告を学食のあちこちで目にする。

最近の学生が経済的な問題で食費を削ることを防ぐためということだが、それなら単純に価格を下げてもいいはずだ。生協がメリットとして謳っている、手持ちがなくなっても学食を利用できることについては、すでにクレジットカードやプリペイドカードが導入されている今や、特別メリットとは思われない。

むしろ、北大生協の運営上の戦略と考えた方がいいだろう。ミールカードは、1日1,000円までのものは16万円、800円までは14万円も一括で支払うため非常に高額な印象を持つ。新入生にとっては、入学金と授業料だけでもかなりの負担のはずだ。一方、生協にとっては、年度始めにまとまった収益があれば、その後の運営が楽になることは簡単に想像できる。そのため、大学での生活を知らない新入生が保護者とともに大学を訪れるこの時期に、入学準備のごたごたの中で安心感と割安感を売り込んで契約を成立させるのではないだろうか。

しかし、実際には大学生は必ずしも学食で毎日2食をとるわけでもない。さらに、学食のメニューは揚げ物や炒め物中心で、とても健康に良いとは言えない。こうした現実を知れば、そうそうミールカードを申し込もうとは思わないはずだ。

ミールカードのようにハイリスクを組合員である学生に迫るようなサービスは、社会の風潮に乗って大学生協がやることではないだろう。ミールカードで収益を安定させなければ、現在のサービスの水準を維持できないとしても、新入生の大学生活への認識が低いこの時期に申し込み期限を設定して、慌てて契約を成立させてしまうのは以ての外だ。もう少し学生の現実に見合ったサービスを考えられないものだろうか。

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コメント

ちょっとおじゃましていいですか。

1年前に申し込んだ方にお聞きしたところでは、「自分でつくるより栄養バランスを意識できると思う。」とか「朝食をしっかり食べられるようになった!」とか、けっこう評判よかったんですよ。

「生活に合わない方は、5月末までに取り消してもらえれば、実際に食べた分との差額を返金します。」とご案内しているので、「私の生活には合わない」と思った人の多くがキャンセルされたようです。今年もそういうしくみにしています。

「1年分の食事代を払ったら、あとは自由に食べる」というしくみは、欧米の大学などにはよくあるしくみですが、これを成り立たせるには「1日2~3食食べても不満を感じない健康的な食事をご提供すること」です。一所懸命がんばりたいと思います。

ご指摘いただいた点を真摯に受け止めます。ミールカードに触れていただき、どうもありがとうございました。

投稿: 生協専務やなぎだ | 2006年4月10日 (月) 20時44分

欧米の大学などによくあるからといって、そのしくみがいいものとは言えないでしょう。また、そのしくみの目的が、学生に規則的、健康的食事を提供することだとしても、1年分の食事代を1度に支払う必然性が見当たりません。せいぜい学生が月々のバイト代で支払えるような価格で、いつからでも契約できる方が親切なのではないでしょうか。

投稿: H本 | 2006年4月11日 (火) 22時44分

そのとおりだと思います。以下はいいわけです。「1日上限800円または1000円、この金額を超えたかどうかをどのレジでも判別できる」などのしくみにするためには、「ミールカード側で処理する情報」と「食堂の各レジで処理する情報」とを組み合わせてうまく運用しなければなりません。今のところ現行ルール用のシステム開発と運用を行うのが精一杯で、「毎月」などをルール化する力が生協にありませんでした。システム開発費用は1千万円の桁の金額で、同様のしくみを採用する大学生協と協力することで北大生協の支出をぐっと引き下げています。北大生協内で、また他の生協とも相談して、さまざまある支払方法の一つであるミールカードの使い勝手をもう一回り改善できるかどうか考えてみます。2回も勝手に書き込ませていただき、失礼しました。また、ちゃんとかまっていただき、ありがとうございました。

投稿: 生協専務やなぎだ | 2006年4月12日 (水) 10時43分

>欧米の大学などによくあるからといって、そのしくみがいいものとは言えないでしょう。
→その通りですね.また,顧客(学生)に人気があるからといって,それがよいサービスとは言えないと思います.

 ミールカードについて,その利点・利便性だけを強調するのではなく,その不便・危険性などについても十分注意する必要があるように思います.ミールカードはクレジットカードと同様,紛失,個人情報の漏洩という問題は必ずありますし,現金を使わず何でもカードで用を足すことによる弊害,つまり学生の金銭感覚のマヒ・自己管理力の低下,あるいは,生協での食事に頼ることによる自炊力の低下も心配されます.最近は,金銭感覚の無い人(それゆえ借金やクレジットカードなどのトラブルも急増している)や,自己の生活管理もできないような大人が増えています.また,何でもお金で解決したり,自由に好きなサービスが受けられるという多様性・利便性の裏に隠れて,人々のモラルの低下も大きな社会問題となっています.大学がそのような人間をつくる足場となってはいけないですし,大学はむしろ,そうした社会の反省に立って,市場主義とは逆の立場で,本当の「食育」を実践するところとして大きな存在意義と責任があるように思います.もしそうでないのならば,大学生協は金額以外で他のお店とあまり大差ないように思います.ミールカードの利便性の影には,親元離れてまもなく知る食事作りの大変さ,親の苦労,健康管理の大変さ,街のスーパーで食材を買うときの金銭感覚や社会交流,生活感など,お金では得られない大切な価値が見落とされてしまいがちです.今,ファストフードとは対極的に,「スローフード」や「食育」という言葉が徐々に見直されてきています.大学生協には,世の中の風潮にとらわれず,本当の食育文化の価値を守る役目を果たしてほしいです.

投稿: 学生A | 2006年4月12日 (水) 13時21分

> 生協専務やなぎだ さん
大変な苦労の末にようやく今のシステムが実現したのですね。開発と運用の難しさは想像できましたが、つい価格と時期に伴うリスクにばかり目が行ってしまいました。一方的な主張で配慮に欠けていたことは反省します。

ここで書くのは何となくはばかられていましたが、学生Aさんのコメントがありましたのであえて書きます。他の国立大学法人には、コンビニを始めとする民間業者がキャンパスに進出しているところもあります。このように市場原理を導入すれば、学食が改善されるなどど安易には考えません。競争によってサービスは向上することも低下することも考えられるからです。一方、北大では生協が独占状態です。この理由の一つとして、学生を含む北大が生協を支持していると考えても良いのではないでしょうか。ですから、生協への信頼と期待に応えるために、民間でなく生協だからこそできる組合員のためのサービスを提供し続けて欲しいと思います。その意味でも、ミールカードの今後に注目します。

> 学生A さん
クレジットカードなどを使用すると、支払い時に金銭の管理をしなくなりますが、口座の管理をしなければいけなくなります。確かに自己管理能力の低下を助長している側面も否めませんが、管理能力に自信がなければ使わないという選択肢もあります。ですから、ミールカードやクレジットカードは、金銭の自己管理の方法を広げたと考えることもできるのではないでしょうか。ただし、ミールカードに対する学生の評判からは、やはり自己管理能力の低下も感じられるので、そうした学生にとっては次へのステップと捉えましょう。ミールカードありきではなく、総合的に判断した上でミールカードの使用、あるいは使わないことを自ら選択できるようになることは、食育の目的とも合っていると思います。

投稿: H本 | 2006年4月13日 (木) 13時01分

H本さん,コメントありがとうございます.

>H本さんは書きました
>クレジットカードなどを使用すると、支払い時に金銭の管理をしなくなりますが、口座の管理をしなければいけなくなります。確かに自己管理能力の低下を助長している側面も否めませんが、管理能力に自信がなければ使わないという選択肢もあります。ですから、ミールカードやクレジットカードは、金銭の自己管理の方法を広げたと考えることもできるのではないでしょうか。

→選択肢は確かにありますが,果たしてそれが実態を意味しているでしょうか?例えば,インターネットを例にとってみます.セキュリティや個人データの管理に自信がない人でも,今やこれを利用しない人は稀です.「自信のない人はインターネットを使用するな」という建前は今の実社会では通用しなくなっているようです.クレジットカードも同様でしょう.社会の商業リズムがそれを前提に動いているからです.そのリズムは急に変わる,あるいは急に変えられるものではありませんので,理屈だけでなく,常に実態と照らして何が足りないかを考えることが大切だと思います.ここでの議論でそれが少しでも見えてこれば幸いに思います.前回の私の投稿は,ミールカード導入について負の側面もあるのだということ,そして,社会を支える基盤ともいうべき大学のそばにおいて生協の果たし得る役割についてコメントさせていただきました.大学生協への期待は大です.

投稿: 学生A | 2006年4月15日 (土) 23時41分

インターネットもクレジットカードも、上手く利用すればともて便利な道具です。けれども、道具には必ず危険が付きまといます。問題は、そうしたサービスを運営する上で、その危険性が利用者にとって高すぎたり、被害が大きすぎたりしないことと、その危険性を利用者が認識しているかどうかだと思います。

インターネットを通じた情報の流出は、利用者に限らず周りにも被害をもたらします。クレジットカードでは、以前話題になったカード破産という問題があります。これらの場合では、個人で対応できない大きさにまで被害が拡大する可能性があることを意味しています。したがって、サービス提供者が利用者の安全を保障できるように改善する必要があると考えます。

しかし、危険性を利用者に認識させる責任が提供者にはあると同時に、利用者も危険性を意識し、利用時には自己管理をする責任があります。多くの場合、利用者が危険性をしっかりと認識していないことにより被害が出ていると思われます。この点の改善も大きな課題だと考えます。

こうした議論をふまえると、現行のミールカードを利用する危険性は、学生にはまだ高すぎると思います。また、利用することで失うもの、例えば学生Aさんの指摘した自炊から学ぶことなど、そうした危険性も含めたデメリットについて、利用者の認識を高める工夫が必要でしょう。具体的には、ミールカードの案内にはデメリットについても記述したり、カード決済についての勉強会を開くなどの方法が考えられます。こうしたことは、営利追求の民間ではできないことで、生協だからできることだと思います。その意味で、学生の教育や学習までに配慮したサービスに期待します。

投稿: H本 | 2006年4月17日 (月) 06時56分

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