教育基本法 第二条 (教育の方針)
教育の目的は、あらゆる機会に、あらゆる場所において実現されなければならない。この目的を達成するためには、学問の自由を尊重し、実際生活に即し、自発的精神を養い、自他の敬愛と協力によつて、文化の創造と発展に貢献するように努めなければならない。
毎日新聞を読むと、この第二条が大きく変えられようとしているようだ。まず、教育の方針の「方針」が「目標」へ変更される。方針と目標の意味を単純に比較すると、「目標」では「当座の目標」という印象を受けてしまう。
さらに、第一条で掲げた教育の目的が、「あらゆる機会に、あらゆる場所において実現されなければならない」という記述を削除しようとしている。これは、教育の目的の普遍的な意味を弱めるように思える。「方針」から「目標」への変更とあわせて考えると、教育基本法を今後の社会の変化に合わせて柔軟に変更して行こうという狙いも読み取れる。
そもそも、改正案では不必要に思えるほど条文が長い。耳障りのいい言葉を箇条書きで書き連ねただけのように思われる。その中には「道徳心」や「公共の精神」、「伝統と文化」、「国と郷土を愛する」などのような言葉をちりばめられ、「自発的精神」は「自主及び自立の精神」に置き換えられている。そして、「環境の保全」が申し訳程度に付け加えられている。条文にこどばを詰め込めば詰め込むほど、何が重要なのか分からなくなり、重要性も相対的に低くなるのではないだろうか。
法律の「改正」が行われるのは、現行の法律では特定の政策を実施できない場合であるから、新しく付け加えた項目について教育が不十分だったと与党は考えているということだ。このことから、現行の教育基本法のもとでは行えないほどの、戦前のような「公共の精神」を育むための道徳教育が行われる危険性がある。そして、新しく加えようとする「環境の保全」と逆行した開発も、「公共の精神」に基づいて公共事業として行われることになりかねない。現に、「公共」の利益の名目で「環境」は破壊されるている。
ところで、改正案で第三条として加えられた生涯学習だが、現行の第二条の前半の条文には生涯学習まで含まれると考えられ、現行の教育基本法の方がより懐が深いものだと分かる。どうしてわざわざ個別に切り出そうとするのだろうか。
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