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DIE WOLKE

ドイツ映画DIE WOLKEの邦題は「みえない雲」。

16日に中越沖地震が起こり、テレビには東京電力・柏崎刈羽原発の火災の映像が流れた。その後、放射能漏れを含む様々なトラブルが50件あったことが伝えられたが、報告が発生から遅れた。報道があるまで県に報告がなかったそうだ。大規模な放射能漏れがあったとしたら、どうなっていたのだろうか。

「みえない雲」は、原子力発電所で大きな事故が起こり、放射能に追われて逃げるパニック映画だった。映画の原作はチェルノブイリ原発直後の1987年に発表されたベストセラー小説ということは、この映画を見るまで知らなかった。高校生のラブストーリーを柱に、原発の抱える問題が絡んで行く物語だった。放射能という「みえない雲」に追われて逃げる恐怖と、パニックにともなう思いもかけない事故。救助されてからも、被曝者に対する差別が主人公を襲っていた。映画の最後に、薄らと希望が示されたことがせめてもの救いだと思った。




みえない雲


DVD

みえない雲


販売元:ハピネット

発売日:2007/05/25

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映画。




みえない雲


Book

みえない雲


著者:グードルン パウゼヴァング

販売元:小学館

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原作小説。

チェルノブイリ原発事故のすぐ後に稼働したのが、北海道にある泊原発だ。もちろん、泊原発の建設には、多くの道民が反対していた。当時、小学生だった自分も、社会科の課題で原子力発電所の危険性について調べたポスターを作ったのを覚えている。けれども、原子力行政と補助金が欲しい自治体によって、チェルノブイリ原発事故のすぐ後にもかかわらず、原子炉が稼働するという結果になってしまった。さらに、現在、新たに3号炉の増設が進んでいる。「みえない雲」を見ても、何も思わないだろうか。

日本政府はこれまでずっと、原子力は安全だと宣伝して来た。原子力発電の危険性を指摘されると、日本のエネルギーをまかなうには原発が不可欠だと主張して来た。そして、地球温暖化の危険性が叫ばれる現在では、原子力は温室効果ガスを出さないクリーンなエネルギーだと宣伝している。飛行機の機内誌には、これまで必ず政府の原発推進の広告があった。

映画「不都合な真実」が売れたからか、京都議定書も批准せずに今まで温暖化防止に消極的だったアメリカも、いよいよ取り組む姿勢を見せている。先日も、Live Earthというよく分からんイベントが行われ、市民に温暖化防止に自主的に取り組むように求める宣伝が増えて来た。身近な話では、レジ袋の有料化なども、その一環のようだ。

29日に投票が行われる今度の参議院選挙でも、温暖化防止が各党の公約に掲げられているそうだが、与党、自民党、公明党のマニュフェスとによると、飽くまで「国民運動などの『自主的な』取り組み」に留まるようだ。大企業やメーカーには顔が上がらない以上、国民に取り組ませるのが無難ということだろう。

「みえない雲」が原作の発表以来20年を経て映画化されたのは、世界の原発への揺り戻しに対する警告だったのだと思う。これまで原発から撤退していたヨーロッパ各国も再び原発に力を入れ始めたという話を聞いた。「資源のない」日本では、相変わらず六ヶ所村の再処理施設も含めて、原発を推進している。さらに、最近では東芝が原子力事業に大きく乗り出しているという話もある。今、地球温暖化の危険を避けるために、原子力の危険を大きくしようとしている。日本のあちこちの原発で、事故の隠蔽が行われていたことも最近明らかになった。そして、今度の中越沖地震による被害。映画「みえない雲」は、ドイツで稼働している原発の数が表示されて終わる。

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