ハイローコーのシンフォニー
読むのが遅いくせにいろいろと人から本を借りたりもらったりしてしまうので、いつまで経っても読むものが減らない。今回、覚悟を決めて、借りたままだった「ミニヤコンカ奇跡の生還」を一気に読んだ。一気に読めた。読んでしまった。
ミニヤコンカ奇跡の生還 (yama‐kei classics)
著者:徳丸 壮也,松田 宏也 |
気温が高くなって、山の雪ばかりか気持ちもゆるむこの季節。そのゆるんだ気持ちを引き締めるのには十分すぎる内容だった。以前、阿部幹雄 著「生と死のミニャ・コンガ」を読んだときに、ある程度は覚悟していたけれど、下山の様子は確かに壮絶なものだった。親友を置き去りにしてしまわざるを得ない極限状態に追い込まれた凄まじい精神状態のままで下山を続ける。繰り返し訪れる幻聴と夢。鮮明に覚えているというのが信じられないけれど、ここまで書いている以上は本当なのだろう。発見される数日前の幻聴は荘厳なシンフォニーだったという。
そんな死の淵まで行って帰って来た著者だけれども、最後の章は「足よ手よ、僕はまた登る」だ。やっぱり山は中毒だ。
ところで、この事故でもやはりさまざまなヒューマンファクターが問題になっていた。事故になったからこそ、そうした部分にもスポットが当てられる。一方、成功した場合は成果ばかりに目が行ってしまって、きっとヒューマンファクターなどによる危険を検証するということはないだろう。松田氏自身が、前年の事故報告書を読み、直接話も聞いているのに結局事故に遭ってしまった。これから全層雪崩のシーズンだ。春の陽気に浮かれずに、雪崩の兆候を見逃さないように心がけよう。
さて、とりあえず、ザックの装備を確認しようか。
| 固定リンク | 0
コメント