08/6/1 尻別岳
尻別岳といってもさすがに雪は残っていないので、もちろん今回は夏山登山。予報は雨だったけれど朝降っていなかったので、S木くんに家まで迎えに来てもらって7時には札幌を出発した。今回初登山のS木くんの友だち、エンサヤさんも一緒の3人がメンバーだった。話を聞くと、エンサヤさんが前日にゴアテックスの登山靴やカッパを買って気合いが入っていて、雨天決行になったらしかった。
定山渓を通り過ぎて中山峠の上り坂にさしかかると、だんだん雲行きが怪しくなって来た。雨が降ってはいないものの、ガスっていて車の窓が濡れる。空もどんよりとしていて、峠を越えても予想通り羊蹄山は見えなかった。喜茂別のちょっと手前を走っているときには、しばらく青空からの陽射しがあったけれど、セイコーマートで買い物をしている間に青空はだんだん離れて行ってしまった。目指す尻別岳の頭は、残念ながら低い雨雲の中にすっぽりと隠れていた。
国道276号線との交差点を過ぎてから、道路脇に物々しい警察車両が目に入った。路肩には「検問中」の標識と警察官が立っている。サミットのせいか、ここら辺もずいぶん物騒になったものだ。サミットが終わるまでは、国道230号線は走りたくないと思った。
登山口への林道がよく分からなかったので、間違って道道66号線を真狩に向かって走ってしまった。地図を確認してみると、もう1本山沿いに道路があるので、国道の側まで引き返してからその道路に曲がった。アップダウンとカーブが続く道路をしばらく進み、長い直線になってから半分ほど進むと右手に登山口への標識が見えて来る。
林道の入り口にあった水たまりは雨でできたものだと思って進んだら、20 cmくらいの深いものだった。農業試験場の間を通って行く道なので、おそらく外部へ種子などが漏れないように車のタイヤを洗浄するためのものなのだろう。何も知らなかったので、ドライバーが一番焦っていた。
林道は結構長くて、かなり高いところまで登って行く。道路の状態はいいので走りやすそうだった。リフト降り場の建物を通り過ぎた当たりで、左手に留寿都コースの登山口の標識が立っている駐車スペースが現れた。車は一台も停まっておらず、先客はいないようだった。車から降りて準備していると、車が1台やって来て隣に停まった。
後から来た2人のパーティに少し遅れて、だいたい9時に登山口を出発した。登山口から薄紫色のスミレが咲いていた。スミレを眺めながら歩いていると、地面の上に渦巻きを見つけた。カタツムリは人間と違って、雨の中の方が嬉しいのだろう。
先週の黄金山と同じように、ここでも道端にはスミレが咲いていた。よく見てみると、薄紫色の他にも白くてちょっと小さなスミレが咲いていた。
登り坂では地面が雨で濡れてとても滑りやすいので、転ばないように慎重に進んだ。下山を考えるとちょっと心配だった。ゆるい坂を登りきってから笹薮を少し進むとちょっと視界が開ける。この辺りでルスツリゾートの方からスキー場と同じように音楽が聞こえて来て、登山の雰囲気がぶちこわされる。スキー場の方を見ると、こんな曇り空でもゴンドラが動いていた。
笹薮の中には、スミレの他にもオオバナノエンレイソウやシラネアオイが咲いていた。
シラネアオイは大きな花びらが雨で濡れると重いのか、下を向いているものばかりだった。
登山道の左側の視界が開けているところで、不意に遠くの方に青空が見えた。ニセコの方だろうか。登る山を間違えたかもしれないという後悔と、今後の天候の好転への期待が混ざる。
雲に隠れているのが有珠山で、真ん中の尖ったのが昭和新山だと思う。
尻別岳への平坦な道を歩いて行くと、また別の花も咲いていた。
ほとんど真っすぐの登山道を歩いていると、遠くに標識が見えた。だんだん近づいて標識の文字が読めるようになると驚いた。尻別岳への道は、「登山道」ではなくて「遊歩道」だった。今日は散歩だ。しかも、道路標識のように立派な標識だった。これもサミット関連予算か?
尾根の少し高くなっているところから、ルスツの国際メディアセンター(サミット終了後解体、撤去するという、どう考えてもエコとはほど遠い建造物)と尻別岳の斜面とが見渡せた。メディアセンターへ続く斜面は、滑ると気持ちよさそうだった。もちろん、雪崩による倒木もしっかりあって、木が生えていない立派な雪崩地形だった。
コル付近まで歩いて来ると、目の前に迫った尻別岳の山頂にかかっていた雲が少しずつ晴れて行くのが見えた。エンサヤさんの晴れ女っぷりに感心しながら、少しテンションを上げて尻別岳山頂への急登が始まった。
ハクサンチドリは遊歩道沿いにちらちらと咲いていたけど、これが一番きれいだった。
尻別岳の急登はかなり大変だった。雨が降り出すし、風も強かった。地面は濡れていて滑りやすい。途中、一部には階段もあったけれど、ロープも張ってあるような結構荒れた道だった。遊歩道とは思えないハードな道だ。
急な坂を登りきると、突然目の前に霧の中からボワッと白い花が現れた。サクラのようだった。
ここからの緩やかな登りは、シラネアオイが笹の間からあちこち顔を出す斜面を右手に見下ろしながら進む。風雨が強くて風上にカメラを向けられなかったので、今回は写真を撮れなかった。もうこのときは、とにかく早く山頂まで行って車に戻りたかった。
山頂には10:30に到着した。先行した2人とすれ違わなかったので、おそらく縦走なのだろう。自分たちは山頂ではたいして休まず、すぐに下山を開始した。
下山は向かい風だったので顔が冷たかった。ずるずると滑る下りの道を、足場を確認しながら横向きに降りた。途中、ロープにつかまって油断したのか、エンサヤさんが滑って転んでしまった。幸い、怪我がないようなのでホッとした。
コルを過ぎても雨の勢いは弱まらなかった。どうやら天気は下り坂のようだった。尾根道をひたすら歩いて樹林の中へ入ってしまうと風が弱くなったのでよかったけれど、滑りやすい道の具合はたいして変わらず、下り坂では滑らないように注意した。
登りの時は拍子抜けしたルスツリゾートの音楽も、こんな天気では聞こえて来るとホッとする。最後の下り坂を笹につかまって滑り降りながらなんとかやり過ごした。しばらく歩いてようやく登山口へ戻ることができた。駐車場には車が2台増えている。到着したのは12時で、片付け始めたときにちょうどサイレンが聞こえて来た。
山頂で何も食べなかったので腹は減っていたけれど、雨と風で身体が結構冷えていたので、まず温泉に行くことにした。
新北海道の花
著者:梅沢 俊 |
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