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ルポ 雇用劣化不況

先月、反貧困ネット北海道 設立講演・シンポジウムで講演した竹信 三恵子さんの著書「ルポ 雇用劣化不況」を読み終えた。

ルポ 雇用劣化不況 (岩波新書)Bookルポ 雇用劣化不況 (岩波新書)

著者:竹信 三恵子
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内容は、すごい早口の竹信さんでも講演会では話しきれなかった事例がたくさん載っていた。最初は非正社員に焦点を当てているのかと思っていたけれど、「雇用劣化」が正社員にも及んでいることを明らかにしていたのでゾッとした。

第5章「名ばかり正社員」の反乱の冒頭で現れた「ボトム10」という言葉を読んで、どこの企業かすぐ分かった。日本IBMだ。マスターの就職活動の時は、何を勘違いしたのか、「企業研究」は気付いたらもっぱら労働のあり方や労働問題の研究になってしまっていた。理学部の「学者肌」だったといえば少しは聞こえはいいかもしれないが、ドロップアウトした今ではあまり笑えない。そんな小泉「構造改革」の下、日本企業に襲いかかった成果主義の嵐。当時元気だったIT企業の多くが、成果主義を導入して歪みを生じていた。現在、30代の労働者に鬱病が多い原因も、このためだとよく言われる。「名ばかり管理職」にすることで、残業代を節約する。そして、数年前に多くの労働者を震え上がらせたホワイトカラー・エグゼンプション。さらに、今では「名ばかり正社員」として、企業に都合のいい安価な労働力を発明した。一方で、それらの非正規社員と無責任な管理職との板挟みで、中間管理職は疲弊して行く。

この章で終わってしまったら、救いようがないところだけど、第6章では労働者がユニオンを通して企業に権利を主張し、守らせた具体的な成果が報告される。そして、さらに第7章では、ヨーロッパの制度を紹介して、日本の雇用制度が目指すべき道を示している。企業に都合のいい部分だけヨーロッパから輸入して来た派遣労働を、本来の形にどうやって戻すかの指針だ。

ちなみに、この点については、民主党は財界や企業内労組の顔色をうかがっているためか、これ以上労働者派遣法を改正する気はなさそうだ。「政権交代」だけでは、ヨーロッパ並の労働環境は実現できないだろう。

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