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Two Avalanche Meetings?

今シーズン最初の雪崩関連イベントのTwo Avalanche Meetingsに参加して来た。

タイヤ交換を済ませたせいで開演ギリギリに会場へ着くと、予約の受付が締め切られるほど申し込みがあったという割には、会場は意外と空いていた。後の方の席に座るとすぐに始まった。はじめは、b.c. mapの店員が冬山道具の紹介と宣伝だった。新製品の情報では、から3本アンテナで3万円代まで安くなったビーコンが出たそうだ。1本より3本の方がよさそうなのは何となく予想できるけど、低コストに抑えたことがどれだけ性能に影響あるのか分からない。会場でせっかく触る時間があったので、ちゃんと調べればよかった。マムートはバージョンアップの予定があるらしい。ピープスからは、ビーコンチェッカーというアイテムが出たそうだ。送信されているかどうかだけを音で知らせるものらしい。みんなが期待していた?トラッカー2は発売延期らしい。

アンテナ1本だけどピープスフリーライドが2万円とだんトツに安い。でも、北海道雪崩研究会の松浦さんが言うには、ピープスDSPが一番いいようだ。えすきくんが2シーズンくらい使っていて、去年富良野岳で遊んだときには、自分のオルトボックスX1よりもずっと高い性能を見せていた。やっぱり一緒に行く人には高性能のビーコンを持っていて欲しい。

アイプローブとかいう面白いゾンデがピープスから出ているそうだ。先にセンサーが付いていて、ビーコンに反応するらしい。ビーコンのように、見つかった人の電波をマスク?することもできるそうだ。でも、機械が付いている分、従来のゾンデよりも慎重に扱わなければいけないらしい。山でそんな気遣いはしたくない。

スコップは収納性のいいブラックダイアモンドにあこがれるけれど、買換えを考えるほどには劇的に収納性が高いわけでもないし、掘りやすさもある程度犠牲になりそうだった。そういえば、秀岳荘セールで買い忘れたのに、後になって気付いた。スノーソーを買うつもりだったのに、すっかり忘れてた。仕方ないから今シーズンはえすきくんに借りよう。

アバラングの紹介もしていた。雪崩に遭ってからアバラングをくわえる余裕があるのか?アバラング内蔵ザックは、くわえる部分を取り出すのも面倒なので、危ないところはくわえてから滑る、などという店員の説明を聞いて、一度も売ったことがないというのに納得がいった。確かにゴムホースでも代用できそうだ。

ビカムワンコーポレーションとかいう防災コンサルティング会社から、防災用の寝袋の紹介があった。レスキューシートが袋になっているもので、ビバークとかで隙間ができないのは良さそうだ。1,050円で高くないので、買換えの際は検討してみてもよさそう。さすがにセールスなので嘘くさいこともいっていたけど、実際に冬山で使用した結果を示してもらいたかった。

1時間以上の長すぎる山道具体験コーナーと休憩を挟んで、カナダ雪崩プロフェッショナルの藤村知明さんの講演が始まった。「雪崩リスクマネジメントの基礎」は、衝撃的な氷河の崩壊シーンから始まった。氷河へ近づいて見物している観光客の目の前で巨大な氷河が崩落して、突然生じた激流に観光客が飲み込まれた。けれども、観光客すべてが飲み込まれたわけではなく、岩陰にいた観光客は難を逃れていた。つまり、危険な場所を察知してリスクマネジメントを行えば、被害を避けたり、小さく抑えられるということだった。とはいえ、樹林帯からいきなり発生した雪崩跡の写真を見せられると、結局、雪崩を避けるのはすごく難しいことだと思った。大きな雪崩では、反対側の山までデブリが勢いで駆け上がっていくそうだ。

雪崩リスクマネジメントとしては、それほど取り立てて大きな収穫はなかったけれど、リスクコミュニケーションという言葉を聞いたのは初めてのような気がする。冬山に入るときには、社会的責任や日常のストレスなどによる精神的な状態、地形や標高、天候などの自然環境などのリスクを仲間同士で言葉に出してコミュニケーションすることを通して共有することが大事らしい。こういう発想は、日本人にはあまりない欧米的なものだと思った。十分とは言えなくとも、これまでも「リスクコミュニケーション」という言葉を意識しないでやっていたことなので、これからはより意識して行おうと思った。そうしたリスクコミュニケーションをもっと大きなスケールで行っているのが、カナダ雪崩協会による雪崩情報の公開だと思う。インターネットで簡単に調べられるようになっているらしく、雪崩の研究や情報インフラが整っている日本も行うべきだと藤村さんは話していた。

残念ながら、日本の行政はどんな場合でも責任回避が最重要課題なので、実現は絶望的だろう。民間団体は行政からの経済的な支援がなければ難しいはずだ。スキー場などの企業にしても、ニセコのように、都合よく責任を回避している。確認してないので実態は分からないけれど、日本ではカナダほど雪崩が社会的な脅威になっていないとか、BCスキーなどが観光として盛んでないとか、きっと要因はいろいろあるのだと思う。けれども、冬山に限らず夏山でも登山客の増加によって事故が増えていることを考えると、登山ブームによる産業振興と税収増などの恩恵だけを受けようとしている観光産業や行政の姿勢は無責任だと思う。

後半の「1910年 ロジャースパス雪崩犠牲者100回忌チャリティ・イベント」では、30分弱のドキュメンタリーがはじめに上映された。当時の日本からカナダへ移民が行われていたことは初めて知った。その日本人移民者が鉄道工事の労働者として雪崩の被害に遭っていたとは全然知らなかった。Mt. Avalanche(雪崩山)に鉄道を通すというのは無謀に思えるけれど、黒部ダムとか青函トンネルとかと基本的には同じなのだろう。ゼネコンや官僚、族議員などが開発とか何とか大義名分を振りかざして、貧乏な労働者を危険にさらし、たくさんの犠牲を出して「世紀の大事業だ」とか言って宣伝する。BCスキーとは直接関係のない話ではあったけれど、自分のようなスキーバカには社会について考えるきっかけになってよかったんじゃないだろうか。ドキュメンタリーの上映後、藤村さんは当時の雪崩について気象データから検証した。100年も前の気象データが残っていることに驚いた。やっぱり情報は大事だ。ちなみに、字幕が付いてたけど手作りだけあって読みづらかった。H多さんによると、実際の英語ともちがってるらしい。字幕にカレーと書いてあったら、うんこだと気付かないと思う。

その次に上映される「The Fine Line」はDVDを持っているし、今回上映されるのは短縮版らしいので、観ないで途中で帰った。12時から延々と5時間近く会場にいて、正直すっかり飽きてしまっていた。最近は集中力がさっぱり続かないのが考えもの。いろいろ質問するチャンスではあったけれど。

DVD【スキー DVD】 The Fine Line (ザ・ファイン・ライン) 日本語字幕付 [DVD]

販売元:ビジュアライズイメージ株式会社
発売日:2009/01/16
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このTwo Avalanche Meetingsは、どっちかというと北海道雪崩研究会の講習の宣伝的意味合いなのだと思った。講演も身近に感じられるものが少なくて、実際に講習へ参加しないとしょうがないようだ。けれども、講習はすでに満員で受付終了。期待が大きかっただけにいろいろと拍子抜け。雪崩防止への関心が高まっていると思えばいいかな。自分でも気をつけなきゃ。

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