「アリ地獄のような街」上映会&渡辺大樹講演会
北星学園大学クリスマスフェアトレード2009の「アリ地獄のような街」上映会&渡辺大樹講演会へ行って来た。
朝起きると、昨夜の暴風雨が嘘のように雨は上がって静かだった。札幌国際へ行くみんなを恨めしく思いながらも、6月の北星フェアトレードフェスタが縁で紹介してもらった上映会へ行くことにした。Skype交流も面白そうだったので。遅れて会場へ入ると、映画はもう始まっていた。会場のせいなのか、映像が常に露出アンダーな印象。でも、正直なところ、生々しい映像で見たくはないシーンが多かったので、それがかえってよかったかもしれない。
故郷を追われて街へやって来た子どもたちが、麻薬密売や性犯罪に巻き込まれる様子が描かれていて、映画を観ていると恐ろしさに身がすくむ思いだった。「これは映画であって、事実そのものではないはずだ」と自分に言い聞かせながら観ていた。日曜の朝から観るには、あまりにも重たい映画だった。
映画本編の後で「特別編」が上映された。ドキュメンタリーではなくても、今回のように講演会などの形で映画の背景などを直接聞くことができると、映画を観るだけよりも内容に興味が湧く気がする。
続いて、エクマットラ顧問の渡辺大樹さんの講演会が行われた。講演の内容がYouTubeにアップされているものとほとんど同じだと後から気付いた。会場の進行の都合で質疑応答の時間は残念ながらあるようでなかった。
映画で描かれたのは、基本的には事実に基づいていると聞くと、やっぱり気が重くなった。けれども、渡辺さんのメッセージはもっとポジティブなものだ。
こういった映画を見て、動いた気持ち、衝撃を何かに変えた時に、それはバングラデシュやエクマットラの活動に変えるという必要は全くなくて、それぞれの舞台、それぞれの立場の中で、日本国内を変えていってもいいし、他の国で変えていってもいいと思うし、それは人それぞれだと思うので、映画を見て何か感じたら、それを何かの行動に変えていくことが重要なんじゃないかと思っています。
感心したのは、ダッカでの上映会では観終わった観客にすぐに活動に参加するよう促して、その日程までその場で決めてしまうということだった。エクマットラの活動への関わり方はいろいろあるようで、積極的に参加することを求めているそうだ。アカデミー建設でみんなが土木作業に加わるのには驚いた。行動に変える
つなげることがこうした運動にはきっと一番大切なのだろう。
日本国内を変えるという点では、渡辺さんが触れていた年間自殺者3万人などといった問題が日本にもある。映画を観てバングラデシュの人がバングラデシュの問題に目を向けるようになるのと同じように、日本人が日本の問題に目を向けることは大事なことだろう。去年暮れの「派遣村」が多くの日本人に非正規労働の実態を気付かせることになったのも、メディアがこの映画と同じような役を演じたのだと思った。
それにしても、バングラデシュの光景が何となく日本の戦後復興の時代と重なって見えた。もちろん、その時代に生きていたわけではないから実体験としてではないけれど、テレビなどの映像を通して見た街が栄える様子と貧しい子どもたちが暮らす光景は、遠い外国の知らない世界には思えなかった。あと何十年か早く生まれていたら、あるいは、今この時代に生まれたのだとしたらと思う。バブル期に子ども時代を過ごして、幸い経済的に困ることこそなかったけれど、日本中が浮かれている状況に常に不安を感じていた。今も社会の危機感を一番強く感じているのは、子どもたちなのかもしれない。
最近のバングラデシュの経済成長には目を見張るものがあると渡辺さんは話していた。確かに、そのおかげで経済的に豊かになった部分もあるのだろう。ただ、その過程で犠牲になるものがあまりに大きい。欧米の先進国や日本と同じ道を辿らなければ経済成長できないわけではないだろう。経済成長の負の側面がもっと注目されるべきだと思う。
昼食を食べた後に見てみたSkype交流は、インターネットの問題点をまざまざと見せつけられた。日本側の通信環境がいくら良くても、子どもたちがいるバングラデシュの通信環境が悪ければ、Skype交流なんて実現不可能だった。途切れ途切れの映像と音声。カメラの前に集まっている子どもたちの様子は分かるけれど、「交流」というには無理があった。インターネットが距離を縮めたのは間違いないけれど、インフラの整備状況に格差があれば、それがちがった意味で距離を遠ざけるように感じた。それでも、上映会と講演会などを通じてバングラデシュの様子を前より知ることができたのでよかった。
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