北村研修会
雪崩研究会の講師養成クリニックに参加して来た。
といっても、講師養成クラスではなく一般での参加。山へ滑りに行けないのが残念でならなかったけれど、これも雪崩事故のリスクを少しでも下げるためだと思って我慢した。
初日、16日(土)は札幌ではこの冬一番の雪が降っていて、初めて自宅前の雪かきをした。会場の北村へ行く道中も、強風と降雪で地吹雪がひどく、時おり視界がなくなる中を移動した。山中での訓練でなくてよかったと思った。この天気なら入山しないだろうと車の中で話していた。
会場の北の生活館で、早速、秋田谷先生による「気象データから積雪を読み取る」方法論について話を聞いた。雪崩事故の調査では、破断面の積雪が調査されて弱層が特定され、その弱層がどの時期に形成されたかを気象データから推定するということがよく行われる。今回は事故の調査ではないけれど、気象データを調べて、実際の積雪を予想するという試みだった。
岩見沢、石狩、札幌、美唄、江別、滝川のアメダスデータのうち、日照、風速、気温、降雪量、降水量の時間変化のグラフから、1週間前までの積雪について気象データと見比べながら解説を受ける。その後、当日までの気象データを見て、この日の積雪を予想した。例えば、数cmの新雪が表面に積もっていて、日中に日射があり、夜間に無風・快晴で放射冷却が起こっていると考えられる場合は、新雪がこしもざらめ雪に変態して弱層になるといった具合に、どんな雪がどのくらいの厚さで積もっていて、弱層がどこにあるかを予想する。
昼食を食べてから野外へ行って、スコップでピットチェックして積雪断面の観察を行う。ところが、弱層テストはしたことがあっても、積雪の観察をしたことはないので、何をやっていいか分からない。教えてもらうと、まずは拳で断面を上から押して行く。拳を押し込めなくなったら、指4本に、それでも押し込めなくなったら指1本で押し込む。拳が押し込めるところの雪の硬さはF (Foot?)、指4本が4f (finger)、指1本は1f、指が入らないところはP (Pen)と表すらしい。硬い方から順に、大雑把に新雪、こしまり雪、しまり雪と判断するみたいだ。こうすることで、積雪の層構造が何となく分かる。断面を水平に擦ることでも層がはっきりする。新雪20cmの弱層は13日朝の冷え込みによるもの、新雪40cmの大きなあられ混じりの柔らかい層は、5日に札幌でも降ったあられがしっかりと残っていたものだと考えられる。結局のところ、山へ入ってその場で実際に弱層テストをして積雪の安定性を判断しなければいけないのだけど、気象データから積雪や弱層を予想することも、雪崩リスク軽減のための情報のひとつにはなりそうだ。とはいえ、自分の予想は弱層の位置は大体当てられたけど、雪質までは無理だった。
色を付けると弱層は分からないけどたくさんの層があることが分かる。
観察はずっと外で行っていたので、足の指が冷たくなって辛かった。深雪を漕いで歩かなければいけないと思っていたので、防寒靴を履かずに長靴で行ったのが失敗だった。靴下を二重にしたくらいでは全然効果がなかった。足全体から熱がどんどんと奪われて行った。周りの人は知っていたみたいで、防寒靴か防寒長靴を履いている人たちばかりだった。
続いて、秋田谷先生自作の雪質接写装置で撮影会。コンデジがいいらしいけど、なかなかピントが合わずに苦戦した。でも、雪の結晶をちゃんと観察するとそれなりに面白かった。寒かったけど。
中へ入ってからは、Y講師による「雪崩発生メカニズム」の講義。雪崩研究会の講師が講習会などで行う講義のひな形のようなもので、1時間に及んだ講義も深い内容で退屈しなかった。むしろ、予備知識があまりない状態で講師養成クラスの内容は理解するのが大変だった。けれども、積雪の予想のときに不足していて苦労した雪の変態について詳しく聞くことができたのがよかった。新雪が時間経過でどのようにしまり雪、しもざらめ雪、ざらめ雪に変態するかや、弱層になるしもざらめ雪、表面霜、雲粒なし降雪結晶、あられ、濡れざらめ雪がどのようにできるかは、科学的な解説が面白かった。最後は、弱層がなくても大雪で雪崩れるというシミュレーションの結果も示されて、例えば、ふわっと積もった雪が1時間に8cm、3時間降り続けると、傾斜が35°の斜面ではいつ雪崩が自然に発生してもおかしくないそうだ。傾斜だけでなく、気温も低い方が積雪間の結合が弱くて雪崩れやすいそうだ。大雪の際には地形なども慎重に考慮した方がいいだろう。ちなみに、タイトル画面は1/10の1107峰の雪崩だった。
講義の後で、観察結果をみんなが山へ行くのに参考にしてもらおうとメールすると、その返事には驚きのニュースが書かれていた。尻別岳で雪崩事故があったらしい。雪崩事故を防ぐために集まっていただけに、そのニュースは夕食の会場を騒然とさせた。とはいえ、山の話などを肴にみんなで酒を飲み交わして、気付けばまわりにはもう鼾をかいて寝ている人たちが多かった。やはり年のせいか。
2階の寝床へ向かうと、自分のスペースを他の手足が占領していて横になれない。適当にずれてシュラフに潜り込んだ。トイレに通う人たちの気配で何度か目が覚めて、眠りが浅いまま起床時間になってしまった。朝6時。まだ外は暗い。みんな朝早いのに元気だ。やはり年のせいか。
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