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オランダの2倍!—異常に高い日本の非正規労働者の割合

3時に早起きしてまで観なかったけれど、ニュースのダイジェストで知った日本の決勝トーナメント進出は、一応、日本人なので嬉しい。監督、メンバーの人選ともに最悪だと聞いていただけに。

その日本と初戦で争ったオランダ。日本は2対1で破れたものの、データにみる欧州と日本を読むと、非正規労働者の割合では18.2%対37.8%で勝っていたことが分かる。

オランダといえば、未来への提言で放送されたように、80年代後半の不景気を非正規雇用を拡大することで乗り切った。ただし、同一労働同一賃金の原則を政労使の合意して雇用制度改革を行った。同一労働同一賃金の原則のないままに、派遣労働が1999年に自自公政権(自民党・自由党・公明党連立政権)下で社民党までもが賛成して原則自由化された日本とは決定的にちがう。

番組紹介より。


世界のキーパーソンに徹底インタビューする「未来への提言」。今回は、長年、オランダ労働組合連合の議長を務め、「オランダ型ワークシェアリング」を築いた功績で世界に知られるロデバイク・デ・ワールさん(59)。深刻な雇用不安のなか注目を浴びている「オランダ型ワークシェアリング」は、パートタイマーであっても安心して働ける同一労働同一賃金の「均等待遇」政策だ。労働者の雇用を守りながら、企業にも雇用の柔軟性を与え、社会保障を充実させることができる独特のモデルとして、EUはオランダ型政策の導入を各国に指示、ILO(国際労働機関)も「労働時間差別の禁止」の決議に踏み切った。デ・ワールさんたちは、80年代後半、政界・財界・組合がひとつのテーブルについて話し合う雇用改革を進め、「ダッチミラクル」と呼ばれる奇跡的な経済回復を実現した。また1998年には、非正規労働者にも同様の権利を拡大した。日本では、セーフティ・ネットの綻びが目立ち、非正規雇用の労働者がワーキング・プアに陥る厳しい事態が続いている。21世紀、人間が人間らしく働いていくために必要なものは何か。社会の枠組みそのものを変えていくためには、どんな行動が必要なのか。現在はオランダ反貧困ネットワークの議長として、市民セクターの力を結集しているデ・ワールさんへのインタビューから、雇用の未来を考える。

政権離脱で一見筋を通したように見える社民党だが、抜け穴だらけの派遣法改正案に無責任に賛成したことは、非正規労働者に対する裏切りとしか映らなかった。これでは無党派層の受け皿になることも期待できない。

オランダとのちがいを目の当たりにして、そんな風に思っていたときに飛び込んできたのが、今回のマツダの事件だった。ほぼ無差別殺人だった秋葉原に対して、標的がマツダ社員に限定されている。憎しみの対象が身近で、自身よりも少し恵まれた人間たちだった。「非正規」対「正規」という対立が、最も愚かで悲しい形で現れてしまった。連合が見て見ぬ振りをするこうした対立を、反貧困や労働問題の専門家、弁護士、全労連などはずっと問題としていた。大企業でこの問題が放置された結果、今回のような悲劇が生じたのだと思う。

活字を読むのが、特に、本のようにある程度まとまった長さの文章を読むのが面倒で、2ヶ月ほどかけて最近読んでいたのが、ロナルド・ドーアの「働くということ - グローバル化と労働の新しい意味」だった。もう5年も前に買ったきり、本棚に入ったままだったものだった。この本の後半で、「貧困層の悲惨は富裕層の生活の質を損なう可能性がある」という指摘を、ジャーナリストの記事を引用して行っていた。

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著者:ロナルド・ドーア
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対応する原文がロナルド・ドーアの年次報告書(PDF)にそのまま載っているので、以下に引用する。

Fifty years ago, the notion of most middle-income earners having their properties protected by an alarm would have been diagnosed as a phobia akin to obsessive hand-washing. By the end of the first decade of the 21st century those who can afford it will have the bodyguards, the razor wire and the dogs; those who cannot will work in the black economy in which weapons and crack are the units of currency. People will carry handguns, legal or not (the present conditions for a handgun licence being that you are a homeowner with a lockable filing cabinet). No responsible parent will ever allow their child out unaccompanied. Nice young couples will play bridge by videophone and every family will set its own curfew. Your car? Bullet-proofed. Your movements? By day and through decriminalised zones. Your leisure? Zen calisthenics, policed by your own vigilante group ...

もちろん、マツダの正社員が富裕層ではないのだけれど、貧困層に比べて裕福な正社員が、非正規労働者からの攻撃に怯える状況は、ちょうどこの記事を思い浮かばせた。そして、この恐怖で国民を支配するという手口は、まさにブッシュ政権下のアメリカだったように思う。日本がここまでアメリカナイズされてしまったとは考えたくもない。

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今さら自分さえよければとか、これ以上悪くならなければとか、そんな悠長なことは言っていられない。自分よりもほんの少し不幸な人間が、いつ自分に刃を向けるか分からない時代になった。とはいえ、ちょうど面白いタイミングで賞金首リストが発表された。これを見て少しは気は変わっただろうか。

日本の決勝トーナメント進出に浮かれるのはいいが、たとえ優勝したところで生活は全く変わらない。日本の庶民に重くのしかかる消費税増税よりも、リーマンショックまでの好景気の間にさまざまな優遇を受けて内部留保を溜め込んだ大企業、私腹を肥やした金持ちから、再分配されてしかるべき税金を取り立てることのほうが、よっぽど生活を向上させることに気付いてはくれないものだろうか。サッカー以外でもオランダや他の欧州諸国と並べるだろうか。朝っぱらから騒いでいるエネルギーをもっと有効に使って欲しいと思った。決勝の日に期待だ。たぶん、その頃には期日前投票を済ませていると思うけど。

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