カメムシ天国
粉中毒が住みたい場所は、カメムシも棲みたい場所だった。
紅葉がきれいな道路を定山渓まで走り、さらに進むと木々はしだいに鮮やかさを失い中山峠ではもう冬の装い。けれども、車窓から見下ろした紅葉のパッチワークは美しかった。シャンプーハットのように低い雲を頭だけ突き抜けた後方羊蹄山が出迎える。標高が高いところこそ紅葉は盛りを過ぎていたが、麓の林の黄葉がが朝日を浴びてきれいだ。
ニセコグランヒラフのすぐ手前の泉郷では、大量のカメムシの歓迎を受けた。パウダースノーのメッカの意外な一面に驚く。窓から便器の中まで部屋のあちこちを這い回るカメムシの多さは、ニセコのイメージと大きなギャップがあった。Japanese Kitchen ぼうけんでは、テーブルの上を歩き回っている。触れば臭いけれど、黙っている分には大きな蟻程度にしか感じない。とはいえ、近寄って来るのは御免願いたい。
比羅夫小学校の校舎を改装して作られた食堂では、もう薪ストーブが焚かれていた。山野草らんちは、奥の山で採った食材のてんぷらがメイン。アカツメクサを食べたのはこれが初めてだ。実はたくさんの食べ物に囲まれていることに気付いていないだけなのかもしれない。アイヌが農耕を必要としなかったこともなんとなく理解できるようになって来た。すっかりヤマトの思考に染まっている自分に嫌悪感を抱く。
後方羊蹄山の麓に広がる畑を眺めながら札幌へと帰る。生まれ育った街は好きだけれど、便利さを代償に失っているものの大きさを感じて、もう少しここでゆっくりしていたいと感じた。庭には元からそこに生えていた白樺で作られた鉄棒。そばには手作りのブランコが風に揺れていた。
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