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雪山ガールと行こう!

山ガールで行こう!にインスパイアされて雪崩研究会の資料にそんなことを書いた。

バックカントリーでの雪崩リスクマネジメントとは、滑りの楽しさと雪崩リスクのバランスをどうやってコントロールするかということだと考えている。基本的に、楽しく滑れる斜面ほど雪崩リスクが高いと言える。滑って楽しい35°〜40°の斜面で雪崩の発生率が高く、積雪が深いほど雪崩の被害は一般に大きくなる。沢状地形にはいい雪が溜まりやすいが、雪崩に巻き込まれた場合は深く埋没する可能性が高い。これらのことを踏まえた上で、積雪の安定性と地形による雪崩リスクをより正確に把握し、より大きな滑りの楽しさを得られてより低い雪崩リスクに収められる条件、最適条件を見つけることができれば、最高の1本を滑ることができるはずだ。

けれども、言葉で言うのは簡単でも、実際のこの最適条件を見つけるのはとても難しい。雪崩リスクがこの条件より少しでも高ければ雪崩れが生じて、場合によっては埋没、負傷の危険がある。一方、雪崩リスクの高さを警戒するばかりに滑りの楽しさを犠牲にしてしまうこともある。オープン斜面や沢状地形を避けたり、傾斜が緩い斜面を選んだり、最適条件の前で自然との駆け引きを行う。

この駆け引きを有利に進めるには情報収集が欠かせず、情報の質と量が優れているほど有利になる。そのためには、滑るエリアを限定するのが効果的だと考えた。自分の「ホーム」とするエリアを定めて、斜面の植生、積雪の状態とその変化をできるだけ頻繁にチェックする。このことによって、雪崩リスクを客観的に判断する情報が充実して、より正確に把握できるようになるはずだ。

こうした情報収集は、自分一人だけで行う必要はなく、協力して行うこともできるだろう。同じエリアで滑っている者同士で情報の交換と共有を行えば、一人だけでは得られない量の情報と、場合によっては自分よりも高い質の情報を得られることも考えられる。もちろん、逆の場合も考慮しなければいけないけれど、客観的な判断を心がければ、誤った情報に惑わされることは抑えられるだろう。

一方、滑りの楽しさと雪崩リスクとの最適条件を決めるためのパラメーターは、何もリスクには限らない。滑りの楽しさの、楽しさの質を変えることも、雪崩リスクマネジメントには有効だと考えた。つまり、雪崩リスクがより低い斜面や積雪などの条件でも、これまでと同じか、時には今まで以上に楽しいと感じられるなら、最適条件を探し当てたことになるはずだ。

具体的には、道具を変えてみる。例えば、スキーであれば、アルペンからテレマークへ。スノーボードなら、ノーボードへ。滑りを制御する道具の性能は落ちるが、その代わり、道具に頼っていた部分を自分の技術で補う楽しさや、その道具独特の楽しさを味わうことができる。そして、滑走性能が落ちるため、結果として雪崩リスクがより低い斜面でも滑りを楽しむことができるようになる。これも最適条件の一つだと思う。

最後に、もう一つ考えたのが、滑りの楽しさというよりも、バックカントリーの楽しさ自体を変えてしまうということ。それが、「雪山ガールと行こう!」ということだ。たいてい女の子は体力もないし滑りも下手なので、バックカントリーへ一緒に行くときは滑りの楽しさを犠牲にして雪崩リスクを下げざるを得ない。けれども、雪崩リスクが低くなることはむしろ歓迎すべきことで、女の子と一緒にバックカントリーで楽しく滑れるなら、これだって最適条件になるんじゃないだろうか。

ただし、バックカントリーへ一緒に行く雪山ガールがツンドラだったらたまらない。マニア過ぎる。ツンドラではないということを、雪山ガールの必要条件として提案したい。

以上、資料の補足。

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コメント

ハイレベルな理論を展開してますね。

ツンドラも箱を開けてしまえば
雪山が寄り一層楽しめますよ。

雪山の攻略とあわせてのお楽しみということで

投稿: やっち | 2011年7月 8日 (金) 22時00分

>やっちくん

もしかしたら
こんな人の後で発表する羽目になってたかもしれなかった。
http://ameblo.jp/sizenzin/entry-10938586956.html
そんなわけで
「Fall Line」か「やまと渓谷8月号」掲載を意識して書いてみた。

くぱぁ。
早く雪降って欲しいね。

投稿: H本 | 2011年7月 8日 (金) 22時58分

単独行万歳!!ですが、
山ガールネタはそれはそれでいいんじゃないですか?

投稿: やっち | 2011年7月10日 (日) 21時07分

>やっちくん

単独行を別に否定はしないけど
山へグループで行けば
単独では決して得られない貴重なものを得ることができるからね。
自分の滑りの写真とか
自分が滑ってる動画とか。

山ガールネタはかなり本気だったんだけどなぁ。

投稿: H本 | 2011年7月10日 (日) 22時20分

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