白銀ジャック
表紙に騙された。
買ってから半年以上も寝かせてあった本を、暑くなって来た頃から読み出した。最近は活字離れが酷かったのでライトノベルで頭を慣らしてから読み始めたのだけど、とにかく登場人物が覚えられない。もともと自己紹介の5秒後には相手の名前を忘れるくらいなので無理もないのだけど、最初に登場した時に付いている名前のふり仮名が2回目以降は付いてないので、読み方すら覚えられないまま漢字の記号として登場人物を把握するしかなかった。ラノベのように登場人物のイラストを載せるとか、せめて長編小説のように裏表紙に登場人物を整理してくれたら、覚えることができたかもしれないけど。
そもそも、何よりこの本には表紙の印象からの期待が大きかった。本州の山は全然知らないけれど、表紙に載っている写真はかなりエクストリームなバックカントリー。その写真の上に「白銀ジャック」という挑戦的なタイトルが載っていたので、珍しくあらすじも何も確認しないで買ったのが失敗だった。
![]() | ![]() | 白銀ジャック (実業之日本社文庫)
著者:東野 圭吾 |
帯にすべての鍵は、禁断のゲレンデにある。
と書いてある通りスキー場のゲレンデが舞台で、表紙の写真のような情景はそもそも全く想像できない。それとも、本州には実はそんなゲレンデが実在するのだろうか。何年か前の映画「銀色のシーズン」ではスキー場からちょっと歩いたところで、それなりの映像があったように思うけど、実際に読んでみるとこの物語の舞台はどう考えても樹林限界を超えてなかった。表紙に騙された思いだ。実際、写真の舞台はアラスカだし、「写真はイメージです。」ってちゃんと書いておいてよ。
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販売元:ポニーキャニオン |
「白銀ジャック」の物語はいまいちスピード感がない展開で、スノーボードやスキーの滑りの描写も個人的にはいまいちで臨場感があまり感じられなかった。最後に畳み掛けるように鍵
が解かれていって物語は終わる。
読み終わって思うのは、別に舞台がスキー場じゃなくてもよかったんじゃないかということ。まあ、冬山をほとんど知らずに「バーティカルリミット」を観て結構面白いと思ったように、スキー場をほとんど知らずに読めばそれなりに面白いと思うのかもしれない。辻褄は合っているけれど、スノーボードの是非やスキー場の経営不振、スキーパトロール、雪崩などといったキーワードがあまり掘り下げられずにあっさりと使われてしまっていてもったいない。ミステリー小説のために整理されただけで、作品からの主張が感じられなかった。売れてる小説家がテーマに沿って売れそうな小説を書いたように思えた。好みの問題ではあるけど、表紙の萌えキャラじゃなく表紙の雪山に萌えてしまっただけに余計に悔しい。
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販売元:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント |
今度、禁断のゲレンデ
「国設三段山スキー場」を滑りに白銀荘を占拠だな。
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コメント
自分はタダで読める環境にいるので最近読みましたが
ん、まぁ、なんでしょうね。
売れてる人が書けばとりあえず売れるみたいです。
自分は同じ系統では森博嗣派なんで、
ちょっと深みが足りなくてつまんないです。
この世の中騙したものが勝ちなんですね。
そうしないと売れないモノしか作り出せないこの世の中が悲しいのですが。
投稿: やっち | 2011年8月10日 (水) 01時04分
>やっちくん
森博嗣は映画「スカイ・クロラ」の原作者としては知ってたけど
ミステリーはそんなに好きじゃないし
名前の読み方も分からなかったから
今まで作品を読んだことがなかったよ。
どっちも理系のようだし
出版社も理系は売れると思ったんだろうか。
はい、騙された者が負けです。
私の負けです。
今売れる作品ってそういうモノなんだろうね。
メディアを利用して話題にさえなれば
中身に関係なく売れる。
でも、長続きしなくてすぐに忘れ去られて。
いい作品って年月を経ても評価されるモノだろうし
むしろ後から評価されたモノの方が本物っぽいよね。
やっちくんの写真もたとえ今評価されなくても
死後、10年、20年したら評価されるようになるかもよ。
話題性のある死に方が必要かもしれないけど。
投稿: H本 | 2011年8月10日 (水) 13時11分
スカイクロラって実はまだ見たことも読んだこともありません。もともとブックオフで見つけて読み始めた作家なんで。読んだ本はフロッピーとかの時代で古いです。
このご時世、ただただ回転を上げて数撃てば当たるでしょ。って感じで本出すので、本当にいい本ってなさそうですね。出版社に居るのに本買わないので研究できてませんが。
話題性のある死に方って・・・、たとえば?
愛の無い山岳写真家、下界で未踏峰へ登頂?まさかの腹上死!?みたいな?
投稿: やっち | 2011年8月11日 (木) 01時01分
>やっちくん
FD懐かしいね。
今ではもう中身も確認できない。
いい本が出ていたとしても埋もれてしまいそうだ。
本当にいい本なら埋もれずに生き残るんだろうか。
思いつきで書いておいてなんだけど
売れるためには死に方まで話題性がないとダメだなんて
世知辛い世の中だね。
その死に方って
やっちくんの人柄を少しでも知ってる人ならすごく面白いけど。
そもそも売れるのと評価されるのって別で
評価されるにはとりあえずメディアでの露出度が上がって
売れるのが今は必要なのかと思った。
もしかしたら売れなくても評価される作品もあるかもしれないし
数撃たなくてもやってける人ってすごいよね。
投稿: H本 | 2011年8月11日 (木) 07時16分
難しいお話しになってきましたね。
評価されてる写真家はみんなそれなりに数打ってるとおもいますが。
数打たない写真家って誰がいますか?
投稿: やっち | 2011年8月11日 (木) 21時46分
>やっちくん
確かに写真家をはじめ芸術家って
実は数撃ってるのか。
何となく昔の小説家とかって
今ほど数撃ってなかったように想像してたけど
売れて食えるようになるまでは数撃ってたのかもね。
まあ、どこに撃つのかも問題かもしれないけど。
投稿: H本 | 2011年8月11日 (木) 21時58分