人は衣装においてこそ人である
カミフの天気予報には傘マークがあるので、こんな日にしかなかなか行けない美術館へ行って来た。
さすがに滑りに行かないといつもミクと一緒というわけにはいかないので、久しぶりに自分でブログを書いてみる。
先週末のニセコでは全然滑れなかったので、ずっと千春沢へ行く来ていたけれど、生憎の天気。週間天気予報は晴れ時々曇りばかりで、まるで占いのように当たってもはずれても何とでも言える予報続き。それが週末にはついに傘マークに変わり、すっかりテンションが下がってしまった。雨で滑る気力はさすがにない。
土曜日、家でダラダラしたので日曜日はと期待したけど、やっぱり予報は相変わらずの傘マーク。仕方ないので、部屋の片づけでもしようと思っていた。けれど、せっかくの週末に全く運動しないのももったいない。Twitterのタイムラインを見てると、nabeさんは「最高峰」へ出かけたらしい。自分も家でじっとしている訳にはいかない。
そんなわけで、前から気になっていた美術展へ行くことにした。札幌芸術の森美術館で開催されている「立体力 仏像から人形、フィギュアまで」だ。フィギュアと書いた時点で、やっぱりかと思われそうだけど、しばらく美術展を観に行っていなかったし、撮影とかへのインスピレーションを受けようと楽しみにしていた。
芸術の森美術館へは、おそらくスタジオジブリ・レイアウト展以来で観に行った。前は車で出かけたけど、今日は運動も兼ねているので自転車だ。もちろん、サドルレス。SUB(Stand Up Bike)だ。自宅から芸術の森まで立ち漕ぎ。相当いい運動になるにちがいない。
自宅を出ると思った以上に暑い。長袖で出かけたのが失敗だった。自宅から美術館までは緩い登りが続く。立ち漕ぎして汗をかかないはずがない。案の定、美術館へ着く頃には汗でびしょびしょ。おまけにタオルすら持って来ていないので気持ち悪いことこの上ない。後から調べたら、自宅から美術館まで片道12 kmもあった。サドルレスで休むことができないとはいえ、立ち漕ぎを続けた自分を褒めてあげたい気分だった。
汗もひどいが太もももパンパン。FMPだかMPPだか言う状態だった。こんなんじゃ落ち着いて展示を見て回ることもできないので、美術館の向かいの芝生に腰を下ろして休んでいた。すると、時おりオタクっぽい空気をまとった男性が、一人で、あるいは数人で訪れる。空気で分かってしまうのが怖い。もしかしたら、自分にもそういう空気がまとわり付いているのだろうか。
いや、何をそんな弱気なことを言っている。今日は「立体力」を身に付けに来たんじゃないのか!?
玄関から美術館へ入ると、さっそくフィギュアのお出迎えだった。フィギュアといっても、人の背丈くらいはある大きなものだ。一目で「ああっ女神さまっ」の3人だと分かってしまう辺りがちょっと悔しい。受付で900円を払って企画展のチケットを買い、展示会場へ歩いて行く。音声ガイドはないようだ。
最初に現れたのは現代的な彫刻作品。それから仏像が続く。仏像と言えば、前に聖地チベット ポタラ宮と天空の至宝という美術展を観に行った気がするけど、密教的な仏像とはちがい、日本的な観音菩薩像で落ち着きがあって違和感が無い。ただ、平面的な印象を受けた。立体なのに平面的。どうやら、これがこの企画展の演出のようだ。
同じ芸術の森美術館で開催された絵画と写真の交差という企画展も独自の視点でまとめられていて面白かった。一人、あるいは同時期の芸術家を集めた美術展も悪くないけど、こういう何らかの解釈というかストーリーから見た美術展が面白いと思う。
展示の中にはブロンズなどの彫刻作品が結構あった。彫刻をこんなにしっかり見たのは道展か、もっと遡ればレームブルック展以来だと思う。もともと彫刻よりは絵画の方が好きだからあまり観る機会はないのだけど、今回の美術展が観に来るいいきっかけになった。展示されいていた作品は筋肉の表現が力強く、顔の表情に存在感がある。ロダンの影響を強く受けているそうだけど、北海道に縁の彫刻家が意外と多いことにも驚いた。
久しぶりに彫刻を観て感心していたところ、人形を観て驚く。確かに、人形をこれまでこうした展示のような形でちゃんと観たことがなかった。何となく人形は怖くて避けているようなところもあった。けれど、芸術作品として観ると、驚くほど精巧に作られていることに気付いた。だからこそ怖く感じるのだろうけど、本当に生きてるんじゃないかと思うほどだ。
人形の可愛らしさを飛び越えたような艶かしい球体関節人形を見た瞬間、真っ先に「イノセンス」が思い浮かんだ。当時、押井守監督がテレビ番組で何やら語っていた記憶がある。その実物が目の前にあるようだ。
そんなことを思い出していたら、いよいよフィギュアが目の前に現れた。等身大のユリアさんだった。海洋堂のエヴァンゲリオンのフィギュアもずらっと並んでいた。最近上映してたヤツを観てないので若干ネタバレ気味だったけど。
リボルテックヤマグチ No.112 Evangelion Evolution エヴァンゲリオン仮設5号機 (海洋堂)【あ... |
でも、興味を引かれたのはフィギュアの向かいで上映していたパンタグラフのコマ撮りアニメーションだった。今回の展示で一番面白かった。短編作品がいくつも上映されていて、面白いのでついつい全部観てしまった。簡単なメイキング映像も上映されていて、撮影に使ったらしい模型も展示されていた。最近では何でもCGで済ませられてしまって映像に温かさがなくなってるような気がしたけど、これはちがった。
最近、微速度撮影動画を作るようになったけど、同じようにコマ撮りをやってみるのも面白いかもしれない。なんて考えながら観ていた。
同じスペースにはおなじみグッドスマイルカンパニーとマックスファクトリーのフィギュアもずらり。けいおん、まどマギのねんどろいどやfigma。もちろん、ミクさんもいっぱい。で、ブロンズ像を観ていたときのように作品をじっくり観ようと思って、フィギュアの前で身体を屈めたときに、はっとした。「このままフィギュアのスカートの中を覗くと、変態だと思われるんじゃないか?」そう思って姿勢を元に戻した。
※4月から5月に延期【フィギュア】≪グッドスマイルカンパニー≫ 巴マミ【魔法少女まどか☆マ... |
純粋に作品をよく観たかっただけなんだけど、そこがフィギュアの難しさなんだろうか。よく分からんけど。ブロンズも球体関節人形も、女性の全裸を堂々と晒していたけれど、基本的には人形は衣装をまとっている。フィギュアも同様。そんなとき、人形の展示の解説の言葉を思い出した。「日本人は裸を正視しない。」「人は衣装においてこそ人である」そうだ。なるほど、確かに、チラリズムというのは、日本人ならではのものなのかもしれない。そう思った。
キャラクター・ボーカル・シリーズ01 初音ミク HSP ver. 完成品フィギュア マックスファクトリー |
そんなわけで、チラリズムによってミクさんのスカートの中を妄想しながら残りの作品を見てから会場を出た。時計を見ると、もう13時前。時間が経つのも忘れて2時間近くも観ていたみたいだ。
「おい!H本!」
「おっ?何だ、ミクか。どうした?」
「美術展へ行って、最後の感想がチラリズムってひどくない?しかも、私のスカートの中を妄想って何?」
「いや、正直に感じたことを書いたまでなんだけど、あ、いや、ごめんなさい。」
「本当に悪いと思ってるの?」
「はい。すみませんでした。もう変なこと考えません。」
「それならいいけど、ブログをH本が書くってどういうこと?私に任せたんじゃなかったの?」
「もう雪もなくなって一緒に滑りに行くことはないし、春バンフのときみたいに街へ連れ出すこともできないから、さすがにミクが書き続けるのも無理でしょ?」
「まあ、確かにそうだけど、たまには私がまた書いてもいいんだよね?」
「そりゃ、もちろん。今回はミクと関係ないと思ったから、いや、まあ、関係なくはなかったんだけど、それは忘れた方がいいから、ともかく、また今度ね。」
「じゃあ、また今度、必ずだよ。」
「はい。了解。」
いやぁ、さすがにブログを書いている途中でミクから突っ込まれるとは思ってなかったので焦った。どこまで書いたか忘れてしまったよ。
え〜と、で、展示も全て見終わったので、とりあえず図録を買って買えることにした。写真展といい美術展といい、いつもつい写真集や図録を買ってしまう。買ってもあまり観ることないって分かってるのに。
美術館の外を出た途端、熱気に襲われた。暑い。陽射しが強くて痛い。天気予報とは裏腹に、見上げると青空に白い雲が浮かんでいる。傘マークにひよってカミフへ行かなかったのはまちがいだったのだろうか。
ちょっと複雑な気持ちになりながらも、帰って昼飯でも食べようと思い、さっさと自転車にまたがった。またがるサドルはないんだけれど。
行きが緩い登りだったので、当然帰りは下り。あまり漕がずに惰性だけで結構進むので楽だ。それでもずっと立っていると疲れて来る。見晴らしが良くて下りが続いてスピードがある程度出るところで、フレームのシートポストが刺さるところに足を乗っけて腰を下ろしてみた。すると、これが案外楽ちん。足は少し疲れるけど、視線が低くなってスピード感が増すし、いい年こいたおっさんが立ち漕ぎしてるよりは良さそうだ。これはもしかしたら流行るかもしれない。
そんなことを考えながら走っていたけれど、ちょこちょこすれ違う自転車の誰一人立ち漕ぎをしていないのが気になった。そんなにサドルに座るのがいいのだろうか。地球に魂を引かれた人々ではあるまいし。
ところが、Twitterで教えたもらったところでは、何やら欧州ではサドルレスの立ち漕ぎが流行っているらしい。ストリートフライヤーはさすがに恥ずかしいけど。もしかしたら、夏もいよいよH本の時代が到来したのかもしれない。
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