15/5/2 比布岳
昨年、めでたく10年ぶりに復活した三段山クラブ中岳温泉ツアーに今年も参加。
かつて三段山クラブの恒例行事として開催されていた中岳温泉ツアーも、その苛酷さ故にいつの間にか途絶えて10年が過ぎた去年、代表の大西さんと田中パパに最後のツアーの悪夢を知らない新メンバーが加わって再開された。初日に吹雪でホワイトアウトの中をなんとか中岳温泉までフラフラとたどり着き、テントの中で焼肉をしているうちに快晴となり、雪はともかく2日目も天気に恵まれてなかなか楽しいツアーだった。そんなわけで、再び恒例行事として定着させるべく大西さんはこの日のためにストーブやテントを新調して準備に勤めてくれた。そして、ツアーへの出発当日の朝、集合場所の駐車場で叫んだ。
「あーっ!スノーシュー忘れた!!」
大西さんをはじめメンバーは唖然。というか完全に呆れていた。去年、シールを忘れて田中パパからゆうちゃんのシールを借りるという失敗をやらかしたというのに、今年もやってしまった。
つぼで行きますとは言ったものの、リーダーの大西さんからビジターセンターでスノーシューを借りてくるように指示され、3日で2,400円で仕方なく借りてきた。センターの職員からも登り向きではなくスノーハイキング用だと言われるヒールリフターもなく爪が足裏にしか付いていなくてとても心細いシューだった。ないよりはマシだろうけど、ただでさえはじめてボードで山中泊のツアーだったので、自らハードルを上げてしまったことは苦笑いだけでは済まなかった。きっと三段山クラブでなければ除名だろうなぁ。
共同装備を受け取りザックに詰め込むとかなり重くなった気はしたけれど、ビールを大量に詰め込んだカズくんやパパのザックの方が重い。ロープウェイ乗り場にえすきっくすたちがいて驚いた。
ロープウェイで姿見駅まで上がり、シューを履いていよいよ出発。天気がいいけど面倒なので日焼け止めを塗らずに行ったら下山後にひどいことになった。ちゃんと塗って持っていけばよかったと後悔した。
今回、デカいザックにボードを取り付けて背負うのは重くて嫌だったので、msrnにロープを借りてボードのバインディングに結んで引っ張ることにした。歩いていると若干ボードに引っ張られるけど、心配したほどには邪魔ではない。まるで犬の散歩をしているような気分になる。犬の散歩したことはないけど。これならメカ熊を連れて来ればよかった。
雪は案外残っていたので、目的地を視界でも確認しながら歩いて行く。当麻岳方面へ行くえすきっくすたちの後を追いかけながら進む。ほとんど平行移動なので、ヒールリフターのないシューでも気にならない。昼頃には中岳温泉に着いたので、まずはテントの設営をしてから昼食。今回はスイーツ担当に任命されたので、自宅で仕込んできたお菓子を披露する。
前日の夜にクッカーで焼いておいたクレームブリュレを一晩冷凍したものを持ってきた。ザックから取り出すとほどよく解凍されていたので、表面にグラニュー糖を振りかけて、大西さんからガスカートリッジを借りて持ってきたバーナーを取り付け、砂糖を炙ってキャラメライズした。
スイーツ担当に任命されて考えたのは、雪山で食べるスイーツとはどうあるべきかということ。できれば現地のものを利用したい。軽量化にもなるし。でも、雪を解かして作った水でできるものを思い浮かべても、普段、自分で作っているレパートリーは少なく、自信をもって提供できるものはない。ゼリーは作るのが簡単だろうけど、盛り付けで工夫でもしないとスイーツとして物足りない。
そんなわけで、初日は凍らせて持って行けるスイーツとしてクレームブリュレを選んだ。最後のキャラメライズを大雪山の冷気で仕上げるのは悪くないだろう。それに、キャラメライズするところを見たことがない人には結構インパクトがあるはず。そんな子供だましではあるけど、幸い、みんなに満足してもらえてよかった。
スイーツを食べ終わり肩の荷がだいぶ降りて、実際、テントも張ってしまったので肩の荷が降りたわけだけど、いよいよサブザックにボードを取り付けて滑走斜面へアタックする。初めてのボード山中泊で心配だったことの一つは、サブザックにボードが取り付けられるのかどうかということ。これまでスキーはAフレームで取り付けてハイクアップしたことがあったけれど、ボードは初めてだ。
「あーっ!サブザックにボードが取り付けられない!!」
なんてことにはならないように、事前に自宅でテストして来た。当日、スノーシューは忘れても、大事な準備は怠らないwww
テストしたときと同じようにボードを取り付けて、まだ履き慣れないシューで歩く。シューのブーツへの固定が甘くてちょくちょく外れるので、みんなに置いていかれてしまった。やっぱりスノーハイキング用だと、急勾配には弱い。トラバースは最悪。結局、下りではグリップが限界で尻滑りで降りてしまった。
行き先の安足間岳は中岳温泉から近くてすぐに登り始めることができるけど、さすがに大雪山だけあって、登っても登ってもなかなか稜線にたどり着かない。テン場までのハイクで結構みんな疲れているようで、撮影もしない自分は大西さんと先頭を登っていた。ただ、標高を上げると風が強くて、ボードの取り付けが甘くて不安定なサブザックが煽られて怖い。
みんなが稜線近くまでやっと到着した頃、だんだん斜面の日が陰ってきてはいたけど、まだまだ夕焼けライドには時間が早く、ちょっと微妙な感じだった。とはいえ、今回はカズくんとsokuzaさんの2人が本気で撮影してくれるので楽しみだ。
そう。今回、自分では一切カメラを持ってこなかったw
というのは、ボードで撮影なんてしてる余裕はないだろうと思い、滑りに専念したかったからだ。GoProくらいは持ってきてもよかったかもしれないけど、少しでも軽量化したかった。ボードは素人なので、他のメンバーに迷惑をかける可能性を少しでも低く抑えたかった。スノーシューは忘れたけどwww
「iPhoneで十分です」なんて言ったので、カメラを持ってこなかったことを大西さんに怒られてしまったけど、一応、自分のリスクマネジメントだった。
さて、そんなわけで、今回はライダーとして臨んだツアーだけど、カメラマンの指示はなかなか要求が厳しかった。そして、それに応える田中パパもさすが。最初に指示通りに稜線の影に沿って大西さんは滑り降りたのだけど、パパの番が来たときにはもう影は長く伸びて、フォールラインを薄暗く覆い隠してしまっていた。
光がないので写真が映えないのは自分でもわかる。一方、ちょうど向かいの比布岳の斜面には夕陽が当たって明るく輝いていた。ただ、滑り出しの標高はこちらとほぼ同じ。むしろ、向こうの方が高く感じるくらい。あそこまでトラバースするのか……
トラバースしてみるパパの後をとりあえず追いかけることにした。とはいえ、こっちはボード。テレマークとは訳がちがう。一度履いてしまえば降りることしかできない。案の定、湿雪雪崩の跡の辺りでボードをいったん脱いで登り返すことになった。借り物のボードで、岩を踏む危険性のある斜面は滑れない。メカ熊ならまだしも、今回借りたのは友達のメインの板だ。
つぼ足のハイクなので、時々踏み抜いて体力を消耗する。でも、安足間岳と比布岳のコルへたどり着くと、目の前には急峻な愛別岳の姿が現れて、向こうからでは見えなかった景色を見れたことにちょっと得をした気分。疲労が溜まった体が少し軽くなったように感じた。
カメラマンは遠くて米粒ほどにしか見えないけど、辛うじて手を振るのが見えるので、パパ、msrn、自分の順で滑り降りた。光の当たっているところを滑るので、フォールラインよりもスキーヤーズレフトに滑らなくてはいけない。自分はレギュラースタンスなので、苦手なヒールサイドのターンが長くなる。中盤では心配した通り転んでしまった。ザラメで比較的フラットな斜面だったのに、滑りはまだまだだ。
時間も時間なので登り返しはしないでこのままテン場まで戻る。初心者ボーダーの自分に気を遣ってくれて、尾根を乗っ越さずに沢に沿ってトラバースして下ることになった。安足間岳の南面まで来ると、遅れて出発したtakeさんと合流。これで宴会のメンバーが全員そろった。
下山後、まずはトイレの製作。並外れたトイレへのこだわりを持っている大西さんの指導により、イグルーのようなトイレが建てられていく。ただ、はじめのはテントに近すぎるとmsrnがダメだし。音が聞こえるのは良くないらしい。それはそうだ。大西さんの気遣いは残念ながらかえって失敗だったようだ。とはいえ、完成したトイレに下界から背負ってきた便座を下ろして座り心地を確認する大西さんはご満悦の様子だ。果たして今回のツアーではいったい何人が快便を達成することができるだろうか。
ここまでの行程で疲れた体を癒そうと、大西さんを先頭に温泉へ向かった。躊躇なく全裸になって湯船に飛び込む大西さん。慎重派の自分はお湯に手を入れて確認すると、去年に比べて明らかにぬるい。とても半身浴程度で温まる温度ではなかった。
さらに止めを刺したのは、源泉からのお湯を流し込もうとパパが湯船に導いたのは、沢からの水だった。寝そべって辛うじてお湯に浸かっている大西さんを雪解けの冷たい水が襲う。
標高約2,000mの冷たい風で奪われる熱量と合わせればどうなることか。すぐに6年前の悪夢がよぎった。脱ごうとしていたパンツのゴムからすかさず手を離し、そのまま湯船に脚だけ浸かった。足湯が限界だ。くしゃみも止まらないし、2泊の山行を考えると、初日で風邪を引く訳にはいかない。1泊で帰ってしまうtakeさんも全裸で湯船に飛び込むのを冷静に眺めながら、少しずつ脚が温まって行くのを感じた。結局パパも足湯で済ませ、初日にちゃんと入浴したのは、2人だけだった。
新築された宴会場のV6を大西さんたちが整頓してくれたので、全員が潜り込む。思ったより広く感じる反面、天井が低いので狭く感じる。特に、ビールの缶を飲み干そうとすると、缶の底がテントの天井につっかえて調子が悪い。でも、不満はそれくらいで素晴らしい宴会場を用意してもらえた。大西さんに感謝。
初日の宴会は焼肉。新品のテントの中で焼肉するというのはなかなか自分ではできないけれど、V6はそういう運命だった。sokuzaさんが持って来てくれた礼文さんの行者にんにくが焼肉を引き立てる。山わさびもおろしてくれて、豪勢な夕食だった。とはいえ、持って来たビールとワインだけですぐに酔っ払ってしまい、ウトウトしているのを見つけられたので、初日の宴会はお開きに。
酔っ払う前に翌日の予定の打ち合わせがあり、2日目の目的地は北鎮岳に決まった。安足間岳から見えた北鎮岳の北斜面には雪がしっかり残っているのが確認できて、過去の中岳温泉ツアーでもこの方面には行ったことがないそうだ。自分としても北鎮岳はまだ滑ったことがなかったので、ちょっと距離が長くてシューでは不安だったけどリクエストした。まあ、荷物も軽いので大丈夫だろう。
久しぶりのテント泊でちゃんと眠れるか心配だったけれど、アルコールと疲れのせいか、朝まで目が覚めることもなく熟睡できた。
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