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Vector Glide Make BC 188

VTUCの1日目に初めてMake BCを借りて1日滑ってみたので、インプレッションをまとめてみる。

結論から言うと、自分なら買わない。Miku Pistol(K2 Seth Pistol 179 04-05)から買い替えるのは中止。自分には難しすぎた。

今回借りたmsrnのMake BCには、メーカーセンターに合わせてBlack Diamond O1が取り付けられている。カートリッジを確認すると、Mid Stiffだった。Miku Pistolとほぼ同じセッティングと思われ、ちがうのは板自体だけという状況だ。msrnのブーツサイズとのちがいで、1cm弱ブーツセンターはセットバックしたことになるくらいだろう。

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まず滑ったのは、ニセコアンヌプリの北斜面。たくさんトレースが入った中に、探せば何ターンかノートラックを楽しめるだろうかというような悪いコンディションだった。でも、ビデオカメラで撮影するために幸いなことに最初に滑ることを許されたので、フォールラインへ一気に縦に滑り降りた。

さすがにロッカーのおかげでGeniusより細くてもトップが沈む怖さを感じない。内足のトップを取られることなくターンができて、Seth Pistolよりも内足のトップを意識しないで済むのはロッカーの大きなメリットだろう。浮力こそ板の太さのちがいでGeniusほどないものの、滑るフィーリングはBoldよりもGeniusに近い。

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ところが、深雪を滑っている間はまったく不満を感じなかったが、いざゲレンデコースへ戻った途端に印象はガラッと変わる。整地がとにかく滑りづらい。普通にカービングしようと思ってもエッジが全然噛まない。楽に滑っていると常にずるずるとずれて滑っている感覚で、スピードにも乗らないし脚が疲れる。ロッカーしてるせいで、ちょっと板を傾けたくらいでは角付けできずに、接雪点より前は虚しく小さくパタパタと揺れている。本来は内足から角付けを始めたいのに、角付けできずに谷回りをスキップして山回りに入ってしまうイメージだった。角付けするにはある程度速いスピードで板をかなり傾けて荷重しなければいけないようだ。

不整地へ行くと、日差しと暖気で緩んだ湿雪がギタギタにされて残っている状態。見るからにテレマークでは修行になりそうなコンディションだったけれど、GeniusでもMiku Pistolでもそこそこ滑れるはずの斜面だ。それにもかかわらず、Make BCではまったく歯が立たない。整地ですらエッジが立たなくてコントロールできなかったのが、不整地ではさらにどうにもならない。フクイチ並みのアンダーコントロールだw

外足ですら角付けが上手くできず、ただひたすら下へとずり落ちていくのみ。踏ん張ろうと思って踵側に荷重したらしたで、板が硬いのでテール側に弾かれて発射されてしまう。仕方なくつま先側に荷重しても、やっぱり角付けできずに滑り落ちる。

深雪では有効に働いていたロッカーが、整地では逆に大きなデメリットとなってしまっていた。板が柔らかければ、たわませることで角付けができたかもしれないが、テレマークの内足では硬い板がたわむほど荷重できるはずもない。Geniusのロッカーは整地におけるデメリットを感じないが、Make BCは明らかに角付けしづらかった。はっきり言って、Geniusの方が整地も不整地も滑りやすい。本来ならGeniusよりも細い分オールラウンドに使える印象を持っていたが、フレックスバランスの設定のために形状とは対照的に非常に乗りづらい板だということが分かった。

これはMake BCが基本的にはアルペンスキー用に作られているからだと思われる。好んで乗っているプロライダーの浅川さんは、アルペンスキーで身体もがっしりとしていて当然脚力もあるだろう。しっかりと板をたわませる荷重ができる条件がそろって初めて、Make BCの性能は発揮できるのだと思う。テレマークならNTNで硬いブーツにすべきだろう。

実際、残念ながら身近にたくさんヴェクターグライドテレマークユーザーがいるにも関わらず、本当に気持ちよくMake BCを乗りこなしているユーザーをあまり見かけない。msrnも例外ではなく、ゲレンデはもちろんBCでも苦労しているように見える。滑りを楽しむ道具のはずなのに、乗りこなすだけで苦労するというのは、自分には本末転倒に思えてしまう。

ヴェクターグライドのプロライダーである永島さんは、「Geniusに乗っていると下手になる」と言って、今ではほとんどGeniusには乗っていない。でも、アマチュアの週末にしか滑れないような普通のスキーヤーがそれを真似てGeniusに乗らないのは非常にもったいない。プロライダーは開発にも携わる以上、技術の向上・維持に努め、様々な板を乗りこなせる必要がある。

一方、アマチュアには限られた時間の中で、コンディションにタイミング良く恵まれたときに最高に楽しめる道具で滑ることこそ、特に、BCで目指すべきなのではないかと思う。難しい板に乗る練習をするなら、平日のナイターで十分だ。Geniusに乗って下手になろうと、Geniusの達人になって他の板と同じようにどんな斜面でも滑れるようになれば結果は同じだ。むしろ、板が一つで済む分お得だ。あまりありがたくないユーザーかもしれないが、アマチュアなのだからそれでいい。

スキーの板には自分との相性がある。体型や筋力、滑りのイメージ。それらが板の持つ特徴と合わなければ、その板を使わずにもっと自分に合った板を使えばいい。自分にぴったりの板を見つける喜びはとても大きい。

そして、幸いなことに、Vector Glideというメーカーは、基本的には同じ板を作り続けている。最初のCordovaは10年以上の間、形状に関してはまったく変化していない。フレックスにバリエーションが増えたことの良し悪しはあるとは思うが、自分に合った板を見つけやすくなり、その板を履きつぶしてまた同じ板に買い換えることも可能だ。

Geniusもリリースしてから6年目。自分で乗るようになって5年目になるが、パウダー用のファットスキーを買い換えるとしても、またGeniusにするだろう。ゲレンデの整地やコブ、春用のMiku Pistolの代わりを見つけたいところだが、Make BCが今回、第一候補から消えたことで、ますますスキーから遠ざかりそうな勢いだ。特に、ゲレンデや春はますますスノーボードで滑ることになりそうだ。

余談が長くなったけれど、Make BCを海外大手メーカーの飛び板と同じように考えていた人たちには、「この板はまぎれもなくVector Glideの板だ」とはっきり言っておこう。見かけに反してGenius以上に尖ったヤツだ。

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