16/4/16 NISEKO MOIWA SKI RESORT
ひょんなことからThe Mountain MASTERS World Championship 2016へ出場することになってしまった。
ある日、突然、このレースに招待されたのだけど、当初は出場が認められるのはアルペンスキー、テレマークスキー、XC(クロスカントリー?)スキー等のスキーに限られていた。いやしくもイベントタイトルに「Mountain MASTERS」と冠するならば、山岳滑走愛好者のほぼ半数を占めているスノーボーダーの出場を認めないのはおかしい。そもそもレースが嫌いなので出場するつもりはなかったけれど、曲がった事が嫌いなH本としては、主催者をからかわずにはいられなかったw
すると、なんと、その意見にすぐに応えてくれて、スノボも出場可能なレギュレーションへと変更となった。まさか出場できることになるとは思っていなかったので、もう焦りまくり。状況的に出ないわけにはいかない雰囲気になってしまったw
そこで、なかば出場するつもりであきらめつつ開催要項を調べていると、マテリアル(要はスキーとか)は「市販されている物を使用すること」とある。これだ!自分の使っているスノーシューは、バインディングをYONEXのステップインに改造してあるものだ。改造したマテリアルではさすがに出場はできまい。「改造してあるから出れなくて残念」的なことを伝えて、出場を辞退する上手い口実を見つけたつもりで安心していた。
ところが、なんと、主催者はスノーシューの改造までOKにしてくれたのだった!いろいろ姑息なことを考えていたものの、ここまでしてくれた主催者には出場して誠意を示すほかない。今さら誠意もクソもないけどw
実は、レギュレーションの変更には他にも駆け引きが繰り広げられていたようだが、それを知るのは大会後の懇親会でのこと。
とはいえ、猛者が出場することが予想されるこのハードなレースに一人で参加する勇気はないので、一応、さりげなくmsrnを誘ってみたが、ほとんど反応がなくスルー。「泊まるんなら嫌よ」というノリだったw
どうせそんなことだろうとmsrnには期待していなかったので、大会に興味があるとチラッと聞いたタカを誘ってみた。アルペン、テレ、スノボの3種を極める先輩でもある。すると、嬉しいことに一緒に出てくれることになった。心強い仲間が見つかった。勘違いして車とか別行動になってしまったのは申し訳なかったけど。
さて、前置きがずいぶん長くなってしまったが、ここではよくあること。当日は10時からquesoさんのビーコン講習があるとのことだったので、一応、インスペクションも兼ねて講習から参加するため、9時半にはスキー場へ着くようにと考えていた。ところが、大会の開始は12時。昼ごはんをゆっくり食べる時間はない。パンでも買おうかと考えていたら、ちょうど中山峠を越えたところだった。
時刻は8時半。そろそろパンが焼き上がる時間なのではないか。急いで調べると、ブーランジェリー ジンの開店時間、9時半くらいには真狩へ着きそうだ。もう頭の中はパンでPeace!車をジンへと直行させた。
開店15分前くらいにジンへ着くと、驚いたことにもう客が待っている。行列に加わるのはプライドが邪魔するので、店の前に車を停めてちょっと散歩。と思っていたら、次々新たに客がやって来る。どうやらもう開店していて、玄関の前に座った順に買い始めていた。このままではいつまで経っても自分の番が回ってこないので、安っぽいプライドは隣の小川に放り捨てて流し去り、常連客を気取ってさりげなくベンチに座った。
ようやくやって来た自分の番とはいえ、目の前に美味そうなパンがいくつも並んでいると目移りしてなかなか決められない。とりあえず、薦められた季節のパンのジャガイモのパンと柔らかいパンをお土産用に、行動食用にチョコレートと何かドライフルーツのパンとチーズのパンを買うことにした。うっかり翌朝のパンと行動食を買い忘れたけれど、これ以上買い漁るのはまた安っぽいプライドが邪魔してあきらめた。
パンを選ぶのにも時間がかかってしまい、タカには9時半くらいにスキー場へ行くと話していた手前、遅れないようにちょっと急ぐ。といっても、懇親会用のビールも買わなきゃいけないので、ニセコのコンビニに寄ってからやっと駐車場へ着いた。タカの車を見つけたので横に停めると、こちらに気づいてくれた。
準備をしていると主催者のガッキーさんがイベントの説明を簡単にしてくれた。思ったより緩い感じのようだ。レースに参加できる用意を済ませてから、ビーコン講習の会場へ向かった。講習といっても、よくある講習とはちがい、quesoさんからビーコンの使い方のコツを教えてもらった。マムートパルスバリボックスのアナログモードの使い方を知らなかったけど、複数埋没で近い場合にアナログモードを使えると便利なようなので、今度試してみよう。
レース開始まで30分くらい残っていたので、いったん車に戻って昼飯を食べることにした。腹が減ってはなんとやら。ところが、ここで油断が生じた。天気予報とは裏腹に思いのほか天気がよくてポカポカと春の陽気。喉が渇いたし、ビールでも飲もうかとw
アルコールに弱いのでいつもなら飲まないところだが、魔が差したとはこういうことを言うのだろう。しかも、タカが350mlを半分ずつと言ったのに、1本ずつ飲めばいいじゃないかと、まさか自分の口からこんな言葉が出てくるとは。まさにヒューマンファクターw
ジンのパンにはビールよりワインだったけれど、パンが美味いの温かい春の正午。優雅にビールを飲むのは最高に気持ちよかった。酔いも一気に回る。
気づくともう集合時間。慌ててゲレンデに戻って集合場所まで歩いた。アルコールのせいもありレース前のハイクで無駄に体力を消耗してしまった。しかも、おかげでさらに良いが回る。いい具合にドーピングされ、翼を授かったように身体が軽かったw
コースの説明を聞いた後に、リフトに乗って上から再度説明を受け、インスペクションも行う。このとき久しぶりに見た藻ーリスさんの滑りが格段に上手くなっていて驚いた。もう一度リフトに乗って、今度はスタート位置に集合。自分のスタートは3番。
1番の選手が勢いよくスタート。テレマークの板にクロカン用の滑らないワックスを塗ってきているという強者。最初のハイクアップのセクションでは、1本目のポールまで走り、その後も軽快に登っていた。一部、グリップが悪くて逆ハの字で登っていたけど、何より、登り終えてから滑走に入るまでが早い。ポールも滑り終えてヘリコとかって呼ぶ最後のクルッと回るところも無事に通過。ビーコンサーチもほどなく終えて、そのタイミングで2番手がスタート。
2番手のkazuさんはテレマークでシール。こちらも勢いよく飛び出して、その後ペースダウンはしてしまうものの、登り終えて今度はシールをはずす作業。やっぱり登りから滑りへの作業で時間のロスが大きい。自分もシューとポールをザックに取り付けるのには時間がとられるはずだ。
そして、いよいよ自分のスタート。ビーコンの電源を入れてから合図でダッシュ。そう、走った。前の二人が走っているから、雰囲気的にw
でも、そんなペースが続くわけもなく、1本目のポールを過ぎるとせいぜい早足。2本目を越えたらもう休みたかったw
こんな速いスピードで登ることはないので、身体がまったく対応できない。もはや飲酒がどうこうというレベルではなかった。苦しくて血を吐きそうだった。足が重くて前になかなか出ない。だんだん「なんで自分はこんな辛い思いをしているんだ?」という思いに駆られて、登るのを止めたくなる。最後のポールを通り過ぎてからはハイクアップセクションのゴールをボーっと見つめながら黙々と歩いた。
ようやくハイクのセクションが終わって、今度は滑るために準備をする。とはいえ、全力で登ってきたので休む間も無くザックを降ろしてボードを外してシューとポールを取り付けるのはすごく辛い。焦りと疲れのせいかポールをたたんだり、ザックのバックルを留めるのにも手間取り、なかなか滑り出せない。というか、準備してると見せかけて実は休んでいたりもするのだけど、このタイムロスは大きい。
やっとのことで滑る準備を済ませて、ポールセクションを転ばないように注意しながら特に攻めずに流して滑る。どうせ滑りのタイム差なんて数秒だ。転ばないことが第一。イベント自体がBCを想定しているので、転ばないことが安全な滑走という点からも大事だ。
最後のポールを通過してから、今度は「ヘリコ」に向かって大きくターンする。当初、スケーティングのセクションだと聞いていたのは、実は1本のポールの周りをぐるっと回るというものだったので、ストックを持っていないスノボには一番不利なセクションだ。インスペクションにおいて、無理に滑って回り切ったり、ワンフットでスケーティングするよりは、回れるところまで回ってしまってから這って進んだ方がいいと判断したので、本番でも同じように、止まったところからは手を着いて這って回りきり、それから滑って次のセクションへ向かった。ところが、立った直後に転んで尻餅をつくまでインスペクションのときと同じになってしまい、さらにタイムロスが重なる。
タイムロスは気になるものの、次のビーコンサーチセクションこそ冷静さも要求される。プロービングまででシャベリングはないものの、これまで講習などで学んだことを忠実に行う。quesoさんから速い探し方を教わっていたので、この機会に実践してみると、マムートパルスバリボックスのアルゴリズムはちょうどその探し方に合わせたように50cmくらいでプロービングの指示を出し、スパイラルで1周した辺りでヒット。ジャッジのフラッグが上がった。
失敗したのはプローブの片付け。普段、プローブを急いでザックに仕舞うことはない。今シーズンはプローブを一度も使っていなかったので、固まっていたのか解除に力と時間が必要だった。しかも、今シーズンから新しくしたザックにプローブを仕舞うのに手間取る。この時点で完全にタイムを気にするのは止めてしまった。
最後はゴールまでのスケーティングセクション。ワンフットでスケーティングするには斜度がきついし、ポールで一度ターンしなければいけないので余計に辛い。かといってポールを出してこぐほどでもないので、もう板の滑走性能に任せてゆっくりゴールへ滑るだけだ。それでも気持ちだけが先に行ってゴール直前で転びながらゴール。次のタカは泳いでいたけど、スノボには切ないセクションだった。
ゴールしてからはとにかく気管がひどくやられていて、ちょっとした拍子に咳が止まらなくなる。口の中には嘔吐直前のような濃い唾液が滲み出てくる。微かな達成感とともに、参加した後悔の念が押し寄せてきた。
全選手がゴールする頃にはようやく身体も落ち着いてきた。続く表彰式では、カンピンで出場した自衛隊のOさんが優勝。タカがスノボ部門で優勝。といっても、全部で12人、スノボは3人だけど、この過酷なレースを完走した選手みんなに拍手を送りたい。
まさに異種格闘技戦を思わせる戦いだったけれど、こういうアホなイベントは嫌いじゃない。むしろ楽しかった。同じレースをまたやりたいとは思わないけど、いろんな人がいろんな道具で参加するというのは、それぞれの道具の特性も分かってとても面白かった。
ともあれ、レースが終わったら、ビーコンサーチの補足を挟んで焼肉。宿泊先のRODGE MOIWA 834の前にはもうスタッフがバーベキューの火をおこしてくれていて、一気に肉をビールで腹に流し込んだ。疲れていたせいかアルコールがすごく回る。17時半には焼肉の懇親会はお開きだったけど、その後チェックインして19時からは雪崩の座学だ。もうかなり酔っ払ってるけど。
座学の前にロッジでシャワーを浴びてから、時間まで昼寝。酔いと疲労で限界だった。このロッジはスキー場とは目と鼻の先。駐車場を挟んで向かいなのだから、スキー場へのアクセスは抜群だ。今回は大会だからなのか素泊まり3,800円だったけど、ハイシーズンの価格を聞くと、1泊2食で約13,000円。カプセルホテルとは思えない金額だった。
時間になって起きてからは座学をなんとか聞いていたけど、その後の上映会はほとんど寝ていた。せっかくいろんな人が集まっていたのでもう少し話をすればよかったと思うけど、いかんせん体力がもたなかった。
翌日、倶知安のTさんと滑る約束をしていたので、24時前にはベッドで横になった。他のメンバーも翌日は山へ滑りに行く人が多いようだった。
翌朝、カーテンの向こうの物音で目が覚めたけど、7時くらいまではだらだらと寝ていた。起きて外を見ると雨が降った跡がある。空も今にも雨が降りそうだった。疲れているのでわざわざ雨の中を滑るのも気が引けて、結局、Tさんには断りの連絡をして、午前中のうちに札幌へ帰ることにした。
朝食をとっていなかったので、真狩でおからドーナツを買って食べ、豆腐をお土産に買って帰る。無事に札幌に戻るとホッとした。BCの必要とされる能力とは何かを考えさせられるイベントだった。
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