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ニセコの事情−新谷暁生三部作?より−

読書の秋にさるさんから「アリュート・ヘブン」の続編2冊、「バトル・オブ・アリューシャン」と「73回目の知床」を借りて読んでみて、一連のニセコルールを取り巻く状況や新谷さんの考えについて、やっぱり違和感を覚えた。

新谷さんは極端なほどに弱層に注目した雪崩事故防止を嫌っている。「雪崩は吹雪の最中やその直後に起こりやすい。」ニセコなだれ情報でもよく目にするこのフレーズだ。ニセコの南向きの斜面では、降雪後時間を経てから突然雪崩が起こるとも言っているが、これらはニセコのように冬の間中雪が降っている地域で起こる新雪(柔らかい雪)の雪崩で、例えば、上ホロで起きたハードスラブの雪崩や、十勝エリアのような低温で雪が少ない地域で起こりやすいしもざらめ系の弱層で起こる雪崩とはかなり様子が異なるように思う。もちろん、札幌近郊やカミフの森林限界付近でもニセコのような雪崩は起きるけど、スキー場のリフトを使って滑る場所とは状況がまったく異なる山岳だ。

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吹雪に着目している新谷さんは、弱層テストを利用した雪崩リスク判断を批判し、それを教えるような講習会も批判する。確かに、1回の弱層テストだけで積雪の安定性を判断するのはまずい。けれど、スキー場でなければ大抵は滑るためには登らなくてはいけない。登っている間にいろいろな地形の積雪を感じ取る。リフトに乗っていてはできないことだ。

以前よりもさらに多くの外人がゲートに押し寄せるようになった今、ニセコルール(旧ニセコローカルルール)の取り組みはスキー場のルールとしては機能しているのだろうと思う。ニセコなだれ情報にしても、情報不足を補う意味でも有効なはずだ。

けれども、このニセコルールが成功しているからといって、他のエリアに適用できるわけでもないし、講習会を批判してもあまり意味がない。以前の講習会は弱層テストによる雪崩リスク判断に偏っていたのかもしれないけれど、今ではセルフレスキューに重点を置いたものになっている。ピットチェックにおける弱層テストが積雪情報を知るための一つの方法だという認識は新谷さんとも大きく変わらないはずだ。

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ニセコのバックカントリーエリアで今問題なのは、人の多さだろう。限られた地域に人が集まりすぎている。海外のプロライダーが出演するスノームービーに北海道が取り上げられるようになったせいか、スキー場のリフトアクセス可能な場所はもちろん、周辺のニセコ連山、尻別岳や羊蹄山まで外人が押し寄せるようになってしまった。他のパーティーのことも考えなければいけなくなれば、雪崩リスクマネジメントはより複雑になりリスクも高まるはずだ。スキー場に客が増えるのとはまったくちがう。

これが一時的なブームで終わるならともかく、行政や観光業会はこの状況がずっと続くことを、ブームがさらに加熱することを無責任に期待していることだろう。ルスツリゾート、札幌国際スキー場やキロロリゾート、カムイスキーリンクスなどのニセコ以外のスキー場でも外人が増え、全体としても北海道のバックカントリーを滑る人口が増えているように感じる。それにともなって各スキー場それぞれ「ローカルルール」を作り始めたが、ニセコ同様、古くからの利用者には邪魔なルールになっている場合がある。行政が責任回避ばかりを考えていては利用しやすいスキー場のルールにはならないだろう。

バックカントリーはコース外ではなく山岳だという認識が共有されなければいけない。この認識に立って、従来の山スキーにも配慮したスキー場のルールが作られることを願うけれど、おそらく無理だろう。カヤックをめぐる問題を読んでいてそう思った。

三部作?のカヤックについても興味深い話がたくさんあったけれど、今回は時節柄、雪崩についての内容にとどめて、また今度改めて触れてみたい。

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