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Skiing on the edge

久しぶりに北海道雪崩研究会の安全セミナーへ行ってきた。

ここ何年か雪崩研究会の講演会には参加していなかったけど、「雪崩レスキュー関連機器の現状」というタイトルで榊原さんと飯島さんが話すらしいので、りんゆうホールまでチャリで出かけて行った。以前は雪崩研究会の講演会にも参加していたけれど、休日に行われるASSHの講演会の方が参加しやすく、ここ数年はその1回だけでシーズン前の勉強は済ませてしまっていた。無料だしw でも、なんとなく今シーズンは嫌な予感がするので、気持ちを引き締めようと思い、参加費を握りしめて会場へ入ったw

開演の10分ほど前に会場へ着いたけど、すでにほぼ満席。やはり佐々木大輔の講演があるからだろうか。4,410KBさんを見つけて驚いて声をかけ、隣の空いていた席につく。

ほどなく開会の挨拶がはじまり、続いて佐々木大輔の講演が始まった。たまたま去年も誘われて佐々木大輔の講演を聴いていたので、てっきりまたデナリとかの話かと思っていたら、雪崩研究会の安全セミナーだけに、最初から最後までひたすら雪崩についての話だった。「Skiing on the edge 生と死の間で」という何か本の題のような講演のタイトルに期待していた人はきっとがっかりしたにちがいない。実は雪崩研究会は設立20周年らしく、そう聴くと記念講演なのかとも思えるだけにw

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でも、純粋に雪崩について勉強しようという人には有意義な内容だったと思う。佐々木大輔本人が遭遇してきた雪崩を事例に、フィールドで実際にどんなことに注意する必要があるかを説明してくれた。

最初は地形について。スラブの厚さは地形によってことなり、雪面では分からなくても、内部にノールがあってスラブが薄いところは弱層が破壊されやすい。したがって、先行者のトレースの数10cm上下を通っても雪崩を誘発する可能性がある。ただ、一般的には先行トレースの上部を通る方が安全だろうというのが榊原さんの考えだった。実際、質問に挙手で「上」と答えた会場の人が圧倒的。

ちょうどラッセルを交代したのがちょっとしたノールだったために雪崩れた事例も紹介された。1人なら大丈夫な場所でも、2人では刺激が大きくなって弱層を破壊してしまう可能性はある。この点については実際、過去に痛い思いをしているので強く同意する。

方位が変わると積雪のコンディションが大きくなる点も指摘していた。先行トレースを辿っていたパーティーのメンバーに初心者がいて、キックターンに手こずっていたために、先行トレースよりも5mくらい南東側の奥の沢の方へ進んだときに雪崩を誘発して巻き込まれたらしい。キックターンに手こずったため、そこにメンバーが溜まってしまったため、スラブへの刺激が強くなったと考えられる。東側にはないサンクラストの層が何層も南東面にはあったそうだ。先行トレースを少しでもはずれるときには、先行トレースはないものと考えて安全を図って登るべきだと思った。

雪崩の走路など危険な箇所には止まらずにできるだけ早く通り過ぎるというのはもっともなことだ。登るときのルートも休憩の場所も、滑った後に待機する場所も、やっぱりできるだけ危険な場所は避けた方がいい。ビデオカメラで撮影していても、映像の写りの良さ以上に自分の身の安全を意識している。この点に関しては今まで通り続けていこうと思う。

確か4点目は逃げ道を確保しておくことだったと思うけど、その辺りからボーッとしてきてよく聴いてなかったw

急激な温度上昇でコンディションが一気に変わる可能性があるので、そういう場合は先行パーティーがたくさんいて斜面にトレースがたくさん入っていたとしても油断してはいけないそうだ。夕日が当たって結合が弱くなるということもあるらしい。

上部の地形を意識することが大事だという話で、おそらく唯一動画が流されたけど、アイスクライミング中に上から降ってきた雪崩に襲われるという映像だった。沢には雪が集まるので、想像以上に雪崩の規模は大きくなるようだ。

途中、ちらっとレスキューについて触れていたけど、まず何より遺留物に注目すること。久しぶりにちゃんとトレーニングした方がいいかもなぁ。

まぁ、そんなわけで、佐々木大輔の講演は滑りの映像はまったくなし。期待していたわけではないので全然構わないけど、期待してた人もいそうでなんとなく気の毒に思えたw まぁ、雪崩研究会の安全セミナーに参加するような人なら大丈夫かな。

休憩のあとでお目当の2つ目の講演が始まる。雪崩トランシーバーの最近の動向を聴くと、さすがに自分のビーコンもそろそろ買い替えを検討した方がいいような気がしてきた。2世代前のスマホの性能比較を例に話されるとドキッとする。スマホは2世代前でも自分が使う分には全然構わないのだけど、仲間を助けるための道具となると話は別だ。ハードの計算速度の向上にともなって計算アルゴリズムも改良されているらしい。距離はともかく精度の高さは捜索時間に大きく影響するので気になるところだ。

今使っているのはマムートパルスバリボックス。2011年の秋の秀岳荘セールで買ったものだ。その数週間後に廉価版のエレメントが出てショックだったけど、その後、ソフトウェアをversion 4.0へアップグレード(有料)してもらうことができたので、とりあえずはトレーニングで問題を感じることはなかった。なかなか悩ましい。

悩ましいのは他のアバランチギアも同じで、UIAA(国際山岳連盟)規格とかいうのができて、シャベルやプローブの性能が改善されてきているらしい。プローブの規格が決まるのは2020年の春らしいけど、自分の細いカーボンプローブは強度が足りない可能性が高い。そもそもデブリで使用したことはほとんどないし。シャベルも柄が長すぎるので買い替えたいとは思ってた。どちらも買ってから15年は経っている。適当なタイミングで買い換えるのがいいかも。

ココヘリの紹介もあったけど、それについては傷害保険とかと絡めて改めてまとめてみよう。換算すると1日10円で受けられるサービスらしい。

最後に飯島さんから雪崩エアバッグについての最新動向も紹介された。従来のバッテリータイプは、先日、ノーベル賞を受賞して話題になったリチウムイオン電池が使われているけど、低温で性能が低下する問題があって、ビーコンなどには使われてないし、アークテリクスのエアバッグも結局廃盤になった。で、今度の新しいものはキャパシタを使うものらしい。最近のアイドリングストップがある車に載ってるあれだろう。こっちの方が低温に強いそうだ。とはいえ、今の滑りのスタイルで雪崩エアバッグを積極的に買おうという気はしないな。

セミナーが終わると以前のような懇親会の案内もないので、そのまま家に急いで帰ることにした。帰り際に大西さんに会ったので、土曜日の発表へ向けてエールを送って別れる。

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